都市の利活用をシンガポールで考える
全国エリアマネジメントネットワークの一員として、Singapore Urban Redevelopment Authority(URA)およびCentre for Liveable Cities(CLC)との協議に行ってきた。
主目的は、International Downtown Association(IDA)が5月13日~15日に東京で開催するWorld Towns Leadership Summit 2019への参画要請。
ところが、学習意欲旺盛なURAは、今回の協議を単なる実務だけで終わらせず、相互学習の機会に昇華してしまおうと、濃密な時間割を組んでくれた。
・シンガポールのPlace Management:pilot BID制度など
・CLCのウェブメディア向けのビデオ収録
・現場訪問:Orchard Road、Tanjong Pagar、Kampong Glam、Riverside
・日本のエリアマネジメント:負担金制度と先進事例など
・一般公開のセミナー(保井先生、大丸有、うめきた から登壇)
・ビジネス・ランチ
・現地日本企業との晩餐会
ビデオ収録の様子
ビジネス・ランチ。中央に春節の大皿
シンガポールのPlace Management
URAは、マリナベイの開発計画初期段階にて、計画や開発の後のマネジメントが重要であると判断し、マリナベイ開発庁で検討を開始。そして、Place Managementの専門チームを新設、Business Improvement District(BID)の制度化に向けた4年間の社会実験を、マリナベイを含む10ヶ所のモデル地区で実施している。この社会実験はとても良く設計されているが、現場でやっているのは行政主導のイベントが多いようで、優秀な政府に市民が依存している印象。
Place Managementチームは16名、ディレクターもスタッフも若く、過半が女性。専門領域は多様だが、面白いことに建築職はいない。中途採用も退職も意外と多いそうで、固定的なエリート層のイメージも変わりつつあるらしい。
このような第一印象は、現場訪問で良い意味で破壊されることとなった。
Haji Lane, Kampong Glam
上に政策あれば、下に対策あり
とりわけ、Kampong GlamとSingapore Riversideの民間リーダーは、圧倒的な情熱と人を惹きつける魅力を持っていた。彼らの行動はURAの若く気真面目な官僚の思考を揺さぶり始めているようで、街に根ざした人の営みの尊さに、官僚統制国家の別の顔を垣間見た気がした。
移民や格差の問題が溜まり、首相交代が囁かれるシンガポールの未来は必ずしも薔薇色ではないが、悲観し過ぎることもないだろう。
Kampong Glamのリーダーはアラブ系の絨毯屋の店主
私たちに地区の将来像の意見を求めてきた
Singapore Riverのリーダー(赤い服の女性)はマーケッター
ビジネス交渉力を武器に商店主や政府と丁々発止している
Place Managementとエリア・マネジメント
シンガポールのPlace Managementと日本のエリア・マネジメント。いずれも発展途上であり、言葉の選び方にそれぞれの課題と実情が透けてみえる。
そして、両者の比較から、日本の強みは民間プレーヤーの層の厚さであり、弱みは戦略性とマネジメントにあると感じられた。逆に、シンガポールは仕組み化に本当に卓越しているが、コンテンツはまだ限定的との印象。
5月の会議には、シンガポール政府からも民間からも参加してくれることとなった。再会が楽しみだ。