ぜいたくなアリーナアイス練習会〜2025マスターズ プレビュー
今季のグランドスラム・オブ・カーリングも第4戦「WFG マスターズ」までやってきました。今大会は、主催者側も新しいことに挑戦しており、どんな大会になるのか、とても興味をひかれる大会です。もちろん、日本の女子3チームがどういうパフォーマンスを見せてくれるのかも、楽しみの1つです。
ちなみに、トップ画像は、開催地であるオンタリオ州グエルフの写真だそうです。2つの川が合流する場所にあり、ヨーロッパにあるような大きな教会がそびえ立つ美しい街のようですが、さすがにこの時期になると、最高気温でも氷点下ですし、雪に覆われているでしょう。
日本選手権に向けて
グランドスラムは「年末までに3大会、年明けに1大会、シーズンの最後に1大会」というのが一般的なスケジュールで、今年も年明けのこの時期に1大会開催されることになりました。ただ、日本のチームにとっては、2月上旬に行われる日本選手権との兼ね合いが問題になることがありました。昨季は🇯🇵ロコ・ソラーレが当初予定になかったカナディアン・オープン出場を敢行しましたが、決勝が行われた1月21日から1週間も経たない1月27日から日本選手権が始まるスケジュールでした。日本選手権での結果がふるわなかったこともあり、その選択が良くなかったと考える人もいるでしょう。
今年は、昨年よりも1週間長く間隔が空いており、マスターズの決勝が1月19日で、日本選手権の初日が2月2日です。それでも、個人的には、グランドスラム慣れしている🇯🇵ロコ・ソラーレが出るか出ないかぐらいで、出場のチャンスがあるからといっても、他のチームは直前でのカナダ遠征を嫌がると思っていました。ただ、Xで11月にやってみたアンケートでは、2チーム以上出場すると思う人も36.1%いたので、そうなることもあるかと思っていました。
結果的には、🇯🇵ロコ・ソラーレに加えて、🇯🇵北海道銀行と🇯🇵中部電力も出場することになりました。ただし、ポイント計算上では出場のチャンスがあった🇯🇵フォルティウスは出場していません。競技上の理由を含め、いろいろな都合で辞退したのかと思っていますが、この選択の違いが何を生むのかは気になるところです。
去年と明らかに違うのは、今年の日本選手権がアリーナアイス(≒カーリング専用施設ではない)で開催されることです。そして、アリーナアイスで開催される数少ない大会のうちの1つがグランドスラムです。日本選手権本番の直前にアリーナアイスで世界の強豪と対戦できることは、この時期に時差のある場所を往復することを差し引いても、メリットがありそうに思えます。🇯🇵ロコ・ソラーレぐらい多くグランドスラムに出場していれば、1大会で大きくは変わらないのかもしれませんが、アリーナアイスでの経験が決して多くないチームにとっては、1試合でも多く経験して、アイスヘの対応の仕方をより学ぶことになれば、日本選手権に向けた良い準備になりそうです。
今大会の新しい取り組み
ドラフト方式での予選組分け
運営母体が変わって以来、新しい試みに積極的なグランドスラム。今回の新しい試みの1つは、予選の組分けをドラフト方式で決めることでした。おおまかな選考手順は:
・6大会分の今季獲得ポイントに従って、大会側がシード順を決める
・男女それぞれ第1〜4シードのチームが順番に対戦相手を選ぶ
・組分けが決まった後に、どの別の組と1試合対戦するかを、第1シードが選ぶ(別組との対戦は、1巡目に選ばれたチーム同士、2巡目に選ばれたチーム同士…)
というものでした。それ以外の条件は特にありませんでした。
グランドスラムの出場チームは世界ランキングを基準に選ばれることがほとんどですが、少し前までは、世界ランキング1位と16位で対戦相手が変わらないような試合の構成でした。それに対して、上位シードにもう少し有利な条件を与えてもいいのではないかということで、組内総当たりに変えて、別組との4試合目で上位シードvs下位シードという試合を設定し、上位シードに有利な対戦に少しシフトしていました。
この方法に欠点があるとすると、世界ランキング自体が1か月ごとに大きく変わる訳ではないので、連続する大会を似たような組分けで行うことになること。そして、プレーオフ出場チームが今まで以上に固定化されやすいことも、大会ごとの新鮮味という意味では、欠点だったと言えるでしょう。
大会ごとの新鮮味という意味では、この組分けドラフトには抜群の効果があります。どのチームが予選で当たるのか、事前にはまったくわかりません。実際に選ばれたチームを見ても、シード順通りに第16シードから逆順に選ばれるようなことはありませんでした。🇨🇦ホーマンは、2大会連続予選通過中で第8シードの🇰🇷ハ・スンヨンを一番に選びましたし、男子の第5〜8シードのうち、3巡目に残ったチームは1チームだけでした。全体的な傾向としては、グランドスラムの経験が少ないチームが先に選ばれ、シード順は下の方でも毎回グランドスラムに出場するような常連チームは、指名が後半になったように見えます。
それぞれのチームがどういう考えでその対戦相手を選んだのかはわかりませんが、最終結果が出た時に、大会側が設定したシード順が結果に近いのか、選手たちの選んだ順番が最終順位に近いのかは、気になるところです。
ブランクのルール変更
もう1つ、大会側が今大会に取り入れたのは、「ブランクエンドが2回連続した場合には、次のエンドで先後が入れ替わる」というルールの試験採用でした。これは「ブランクエンドの多い試合はつまらない」という声に対応したものかと思います。一般的には、ブランクエンドが多いのは、女子よりも男子の試合なので、日本の女子3チームにはさほど大きな影響はないのかもしれません。
ただし、例えば、第1エンドには、両チームが氷の状態を確かめるようなショットを選び、事前に合意したかのようにブランクになることがあります。この場合、第2エンドに先攻のチームは、スチールしない限り、次のエンドで必ず後攻となります。1つの考え方として、守備的な(=相手の得点機会を減らす)戦術を選び、相手の7投目までをすべて出してしまえば、今までよりも簡単にフォースする(1点取らせる)ことができます。一方で、後攻のチームとしては、第2エンドが終わって1-0でリードするのも、そこまで悪いとは言えません。このような今まで当然のように行われていたことを、改めて考えないといけなくなりそうです。
個人的には、元々「ブランクがつまらない」とあまり思わないですし、このルール変更でカーリングがより面白くなるかについては懐疑的です。しかし、何が自分たちにとって有利なショットなのかをトップ選手が改めて考える中で、予想もしていなかった戦術の変更などが見られるのであれば、それは楽しみですね。
ブラシフォーム問題への対応とその影響
最近、SNS上を騒がせているのが、性能の良すぎるブラシヘッドが登場したことに対する対応です。以前から潜在的に問題を抱えていたのだと思いますが、それが試合に影響を及ぼすようになってきたことで、マスターズの出場チームが暫定的なルールを設定し、それに対処するために共同で声明を発表しました。それによると、最新のフォーム2種類の使用を自主的に控えるようです。
日本のチームを含む、大部分のチームはHardline社の器具を使用しているため、直接的な影響はなさそうです。影響が出そうなのは、Goldline社の器具を使用している5チーム(🇨🇦ホーマン、🇸🇪ヴラノー、🇨🇦イングリス、🇨🇦スカーリク、🇳🇴ラムスフィエル)およびBalancePlus社の器具を使用している1チーム(🇨🇦エッピング)です。特に🇨🇦エッピングについては、別の会社のフォームを使用することに合意しており、この対応のために一番大きな変更を受け入れたということになります。これが大会にどう影響を与えるのかは、期間中注目を集めることになりそうです。
女子
予選通過チームを予想する
🇨🇦ホーマン、🇨🇦ローズ、
🇨🇦エイナーソン、🇯🇵ロコ・ソラーレ、
🇨🇭ティリンツォーニ、🇸🇪ハッセルボリ、
🇰🇷キム・ウンジョン、🇰🇷キム・ウンジ
今大会からは上位陣の直接対決もかなりあるので、1巡目・2巡目のチームでも、1つ強いところに勝てば予選通過がグッと近づきます。とは言え、🇨🇦ホーマンや🇨🇦エイナーソン、🇸🇪ハッセルボリあたりが簡単に負けるイメージはなく、🇰🇷キム・ウンジョンや🇰🇷キム・ウンジも韓国スーパーリーグで好感触でした。それに比べると、🇨🇭ティリンツォーニや🇯🇵ロコ・ソラーレは、絶好調とは行かないのかもしれませんが、それでも予選は通りそう。
残り1枠は🇨🇦ローズか🇯🇵北海道銀行で迷いましたが、対戦相手を考えると🇨🇦ローズの方が多少通過しやすそうかと。🇯🇵中部電力は、しぶとい戦いを見せる対戦相手が多い印象ですが、韓国の2チームに片方でも勝てると、予選通過が見えてきそう。
🇨🇦エイナーソンは、セカンドに新たにK.バージェス選手を迎えての戦いですが、選手個人の能力は高いと思うので、そこまで問題にならなさそう。🇮🇹コンスタンティーニは、サードのG.ザルディニ・ラチャデッリ選手が冬季ユニバーシティゲームズのミックスダブルスに出場中で、この穴が大きそう。ただし、終わり次第合流するのであれば、🇯🇵中部電力と対戦する頃には、フルメンバーがそろっていそう。
男子
予選通過チームを予想する
🏴マウアット、🇨🇭フースリ、🇨🇦マキューウェン、🇨🇦ジェイコブス
🇨🇭Y.シュヴァラー、🇨🇦ダンストン、🇨🇦グジュー、🏴ホワイト
🇸🇪エディンと🇮🇹レトルナスをあえて外してみました。代わりに予選通過するとしたら、2大会連続で2勝をあげている🇨🇭フースリか。シーズンも後半にさしかかって、カナダ勢も調子が上向いている印象があります。ハーンデン兄弟がフロントエンドにそろった🇨🇦ダンストンも、仕上がりにかかる時間は短そう。🇩🇪ムスカテヴィッツにも期待はするものの、今回は対戦相手が厳しそう。🇨🇦エッピングや🇺🇸ドロプキンにもチャンスはありそう。