【作品と権利】アーティストに“知的財産権”の意識が重要なわけ
アーティストは作品の権利について詳しくない、それは致命的なほどに。このトピックでは、「本当の作品の権利実態」を、知ることができる。創作に人生を賭してもなぜか作品のためには争えないアーティストの、ために書く。
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アーティスト情報局:太一監督
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 ルール度外視、マナー絶対 』
著作権やI.P.の法的側面からの是非は、他で学んでほしい。ここ「アーティスト情報局」では、創作活動に人生を賭すアーティスト本人のために有効な情報だけを提供している。恐縮だが合法、非合法を区別しないのは、わたし自身が失うものの無いアーティストであるためだ。お叱りには対処するが、反省することを約束はしない。
とあらば無謀を選ぶと想われがちだが、逆だ。知れば臆病になり、ルールには従わないが、マナーを遵守する。各国の大小企画を預かる身としてわたしは、作品とアーティストへのリスペクトがない相手のことを人間だとは想わない。
などと息巻くことを、アーティストは選ばない。
そこで、日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。
■ 最新国際ニュース:アーティストの作品を無断でNFT化したキュレーターを告発:イギリス
イギリスのキュレーター、ベン ムーアがNFTの窃盗で訴えられている。フィナンシャル タイムズ紙によると、ムーアはアニッシュ カプーアを含む様々なアーティストの作品を、クリエイターの許可なくNFT化したという主張に直面している。
2013年にムーアは、カプーア、ダミアン ハースト、デビッド ベイリーなどと協力して、ストームトルーパーのヘルメットにアーティストの特徴的なスタイルを施す「Art Wars」というチャリティプロジェクトを行った。先週、ムーア氏は、2013年のプロジェクトのために作られた作品の写真をNFTとして販売する、同じく「Art Wars」と呼ばれる新たな取り組みを開始。現在までに1,138枚のNFTが販売され、600万ドル以上が取引されている。
カプーアやデビッド ベイリーといった大物アーティストが関与していることもあり、NFTの鋳造においてアート作品の画像に関する権利が誰に帰属するかが決まる可能性があるため、本件はNFT関係者の間でも注目されている。
先週、Art Wars NFTを運営するチームは、NFT用の画像は友人の写真家が撮影したものであり、作品自体のIPを保有していると説明している。
2013年の初回発表は行方不明者の親族支援として団体とのコラボレーションだったが、今回のArt Wars NFTプロジェクトでは、チャリティ的な側面はない。
販売舞台のプラットフォームであるOpenSeaは、著作権侵害の通知を受けた後、昨日Art Warsのページを閉鎖した。 - NOVEMBER 23, 2021 ARTnews -
『 ニュースのよみかた: 』
アーティストへの便乗小売人がチャリティー用作品を無断活用してNFTで荒稼ぎも正当性を主張、という記事。
許されない。
映像業界はもとよりアーティストと作品の存在意義を否定する行為だが、なんらかの善意に基づいていることを祈る。
本心ではない。
『 温厚なアーティストたち 』
アーティストは臆病だ。作品の中では息巻くが実社会では、実に朗らかで。多くの事業家や業界外の立派な社会人たちはその様子を読み誤り、彼らの存在を軽んじる。
アーティストは、怪物である。
わたしのようにグロテスクな自信を露出することはなくしかしに、老いてなお獰猛の牙は鋭く、獣の瞳は濁らない。作品と運命を共にしている志士の、覚悟である。例外もいる、と社会人は言う。例外は無くその人物は、“アーティスト風クリエイター”なだけだ。偽者に、牙は無い。
臆病なのは、作品への純粋な忠誠による。
『 I.P.と作品と 』
知的財産権という言葉について、アーティストは知らない。
知的活動から生みだした創作物のうち、 財産的な価値を持つものを「知的財産」と呼ぶ。すでに多くの作品が“選抜”から落選したことに気づくだろう。さらに、 知的財産の中で「特許権」や「実用新案権」などに認められ、法律上で利益を保護される権利が「知的財産権」と呼ばれる。
もう、世の大多数の作品が選抜漏れしている。
では、漢字への期待を捨てて英語にしてみる。「I.P.(Intellectual Property)」とはつまりに、著作権、特許権、意匠権、商標権などの法制度上で“保護される対象”の総称。わかるだろうか、保護はされない。
アーティストの生み出す作品の圧倒的大多数は、財産価値を認められず、保護もされない。作品は、知的財産権ともI.P.とも別なのだ。
作品を守るのは、アーティスト本人である。
『 編集後記:』
数字に、魂が震えた夜。
50年間にわたり日本の偉人の歴史について研究されている先生から、お話を聞かせて頂いた。明治時代の国民は4,000万人。当時に時代を動かした志士はおよそ、1万人なのだそうだ。時代はわずか、0.03%人によって動かされたことになる。100人の無関心の中にただ独りであっても、活動する意義はあるようだ。
協調に安堵を求めず孤独に溺れず、映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。