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自己演出、という罠:『アーティスト黙示録①』

“本物のアーティスト”という表現がある。定義はないが、そう言われれば確かに存在しているように感じる。一方、“アーティスト風一般人”は、確実にいる。「自己演出」の先には、どんな結果が待ち受けているのか。覗いてみよう。

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太一(映画家):アーティスト業界情報局
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監督がスタジオから発する生存の記
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『 スターになる人、スターな人  』

アーティストのとなりにいる、「スター」の話。
映画人は日常的にスターと接していることから、互いに気兼ねがない。そのため、“本人らしさ”に近い状況を垣間見ることとなる。そんな中でわたしは、「まだスターになっていないスター」に気付くことがある。多くの場合それは年齢も性別も、キャリアすらも関係が無い。彼らはもう有名であり、業界地位からも立派な「スター」として扱われているのだが、まだ彼らは明らかに、スターに成りきれていない。
一方で、まだ誰からも知られていないにも関わらず既に、「スター」な人物がいる。

その違いはひとえに、本人の自覚に他ならない。
しかし両者ともに結果、「スター」である。

しかし、社会的な認知と地位を度外視すれば、“スターではない人物”がいる。彼らの多くは“自己演出”に長けた「アーティスト風一般人」である。

『 アーティスト風一般人、参上 』

プロフェッショナルと、アーティストの目は欺けない。スターやアーティストを演じている彼らの多くは勉強家で理論武装を終えており、身だしなみから言動にまで、とても上手に「自己演出」ができている。
しかしそれは“演出”であり、本人の資質には程遠い、演技である。

見抜く方法は、簡単。“レンズ” を通すのだ。

あなたは“写真”を撮影するだろうか。スマートフォンでの撮影は“画像”なのでこの場合、“ファインダーのある写真機”を使う。

ファインダーという漆黒の空間の先には、レンズを通した情景が映る。そこに、相手を立たせてみると良い。

彼らの“自己演出”がはじまる。

アーティスト風一般人はレンズに反射する自身を感じながら、
最上級の自身を演出し始める。

ファインダーをのぞいている貴方はその瞬間、奇妙な現象に直面する。
目の前に立たせた彼らと、視線が合わないのだ。

撮影されていることを過剰に意識している彼らは、心の中で、自分だけを観ている。カメラも貴方も周囲の状況もそっちのけで、自分のことを観察している。そのために瞳の中には感情が映らず、レンズの向こうには、表情筋を動かしただけの無機質な生物が立っている。

写真や動画に精通しているカメラマンやシネマトグラファー、編集マンや監督なら、撮影後の画像や動画素材からも、見抜くことができる。
PhotoshopやDa Vinciがある現代は、“アーティスト風一般人”を救済することができる。それもまた、本来ならば無用な“演出”なのだが。

カメラで確かめる場合、
レンズが切り取る範囲の外周まで見える、“レンジファインダー機”だと尚良い。レンズの隣にある小窓から観察するレンジファインダー機は、レンズを通した描写から浴びせられる“圧”を回避して、被写体を客観視することに有効である。

『 俳優、女優という矛盾 』

俳優、女優の多くは、もっとも俳優と女優に向いていない人種である。
残念だがその多くは、「俳優」「女優」という呼称に憧れた“グッドルッキング”な一般人である。「かっこいい!」「さすが綺麗!」そう言われたい人種が多すぎる。残念ながら、“アーティスト風一般人”が最も多いのが、このポジションだ。

多くの映画、ドラマ作品ではスター芸能人ではなく、“一般人役”が求められる。にもかかわらず俳優、女優の多くは徹底した美容とボディーメイキングで、一般人の印象から遠ざかる努力をしている。しかもカメラの前では“表情筋”の具合を最優先する“アーティスト風一般人”になってしまう。

もういっそのこと、“ただ目立ちたい一般人”としての正体を現してくれれば、と願う。徹底した自堕落な生活で、不摂生を体現してみてはどうだろう。監督として、そんな「正直者」を求めたい。

「スター」は、“自己演出”なんてしない。
そのままの自分をさらけ出す、覚悟をした生物のことをスターと呼ぶ。
さらけ出した自身を撮影させる職業が、「俳優」「女優」である。


あぁ、ところで。
まだ日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際News:映画音楽界の巨匠ハンス ジマーが選んだ最新のプラットフォームは、“スマホの着信音”

巨匠ハンス ジマーは映画音楽界の征服だけで満足することなく、スマートフォン市場に進出。中国のスマートフォンメーカーOppo社の新作「Find X3 Pro」にジマーは、2つの着信音とシステムサウンドの「オーケストラ」を提供する。「“着信音”から何かを感じる可能性を提供したい。“色が聞こえる体験”を。我々はパンデミック下で、物理的な接触という選択肢を失った。そこでわたしは音楽家として、人々の心に働きかけるための別な方法を見つけ出す義務を感じたんだ。それこそが、スマートフォンだった。音楽を演奏するために必要な唯一の方法は、“音符をつなぐ”ことだ。その音符はミュージシャンにつながり、ミュージシャンは観客につながる。その時に突然、今までに無かったコミュニケーションが誕生するんだ」ハンス ジマーは今年、大作映画の公開をひかえている。トムクルーズの「Top Gun: Maverick」、“BLADE RUNNER2049”の監督最新超大作「Dune」、007最新作「No Time to Die」 - APRIL 06, 2021 THE Hollywood REPORTER -

『 編集後記:』

勿論、スマートフォンのスピーカーがハンス ジマーの壮大なスコアを再現することなど出来ようもないしかし、巨匠が下したこのアクションには胸躍るものがある。ブロードウェイの代表的なミュージカルの生演奏から、ハリウッド映画超大作まで、エンターテインメントの世界を席巻した御大が、比べれば玩具のようなフィールドに降臨するのだから。一方、スマートフォンという存在は現在、人類史上で最も多く、そして最も身近に存在しているアウトプットでバイスである。そう考えたならもしかするとハンス ジマーは、常人には及ばない遥か上空から、世界を俯瞰した結果の判断なのかも知れない。もしも全世界のスマートフォンが同時に同じスコアを奏でたならきっと、宇宙にも届く壮大なサウンドとなるのだろう。

この無謀なアクションをも巨匠が提供してくれた新作エンターテインメントだと理解して、中国マネーなどというビジネス色の話は度外視してみるのだ。

深奥なる宇宙に笑われながら震えて明かす日々にも、映画製作の現場へ帰るとしよう。

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