窮地のIMAX社、「鬼滅の刃」に救われる
いらない手間をかけている。それは無駄ではないうえに意義アることだと感じるからだが、ならば“必要な手間“”なのだろう、という自問が生まれる。いや、いらないな手間が、必要なのだ。
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太一(映画家):アーティスト業界情報局
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 不必要な手間をかける意義 』
足袋に穴があいた。だから、縫わねばならない。というこの状況を納得するためには、少しの矛盾と浅めな偏愛を認めなければならない。スタジオに籠もる時間つねにわたしは、作務衣で作業をしている。大島紬の繊細さや刺し子の重厚へのコダワリはとうに無くして、通販で求めた安物だ。下着を隠すためのカバーに過ぎないしかし、足袋にはまだ、想いがある。世界的に評価の高い上質なデニムの産地、岡山製を選ぶ。
だが正直に言えば岡山製は、2度しか選んだことがない。2足しか、持っていないのだ。もう何年履いたことだろう。生地は弱く薄くなっており、直ぐに破れて穴があく。丈夫さを求めたこのデニム足袋だったが、老いた今ではシー アイランド コットンのシャツより弱い。となれば、選択しなければならない。ひとつに、靴下を穿く。少なくとも15足はあるだろうしかし、それでは作務衣にも靴下にも失礼だ。ひとつに、足袋を買い直す。この足袋もまた高価なものではなく、希少性もないのだからしかし、買い直せない。和装が放つ、捨てさせないオーラを無視できないのだ。ならば策はひとつしかない。繕うのだ。直す、などという技術はない。自分を騙せる程度にまで、繕うのだ。
クロバーの縫い針に、横田のダルマ糸を通す。しかし厚みを増してしまった指先は肌当たりが悪くてなにより、見た目に不細工だ。こんなことなら少しだけ手間を赦して、ダーニングしてみればよかった。古来からイギリスでしたしまれている、あえてカラフルな糸でかがる方法。いらない手間には、意義があるものだ。
あぁ、ところで。
まだ日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。
■ 最新国際News:窮地のIMAX社、2022年の復調に自信
ハイエンドな上映施設を提供しているカナダのIMAX社はCOVID-19により、深刻な業績低迷を迎えていた。しかし、救いの手はアジアから差し伸べられた。中国の祝日と、日本の映画「デモンスレイヤー」が記録的な高収益をもたらしたのだった。同社CEOが発言。「2022年にかけて我々は、ワクチン接種の進展とハリウッド大作の復活という多重化状況を迎える。それは好機となるだろう。人々が劇場に殺到することは、日本が証明している。」- MARCH 05, 2021 THE Hollywood REPORTER -
『 編集後記:』
“鬼滅の刃”は北米で、「Demon Slayer(デモンスレイヤー)」のタイトルで公開されている。しかしそれは、米国アカデミー賞のエントリー基準を通すためのプロセスに過ぎず、マイアミの映画館1館で1日3回、たった1週間の上映を終えた。しかしながらIMAX社をはじめ、世界各国劇場ではこの社会現象作品が話題になり続けている。「観客は劇場を求めている!」実のところでは同意しかねるが、そうであって欲しいと願う。劇場に足を運んで安くない金を払い、ネットワークを遮断して2時間を過ごすという行為を受け入れて欲しい。オンライン同時配信も具体化し始めている昨今ではあるがだからこそ、いらない手間をかけて楽しむ“劇場映画”は、必要なのだ。ただし、全ての作品をIMAXで観る必要は、無い。映画の多くは、いや、ごくごく一部の映画以外のすべての映画は、IMAX用には創られていないのだから。地方に残る小劇場のスクリーンも、いいモノだ。海老名に最初のシネコンが建てられる前、世界の映画の全盛期を生き抜いてきた証なのだから。
過去や未来はさておき、現在の映画製作に戻るとしよう。
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