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インディペンデント映画、実現方法。
映画をとりたい監督が多い。それが、映画を撮れない最大の理由だと気付いている監督は少ない。大手スタジオやメジャーのことは忘れて、インディペンデントの仲間たちのために書いてみる。インディペンデントにこそ、国際マーケットでのチャンスがあることを。
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太一(映画家):アーティスト業界情報局
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 映画を撮ろうとしてはいけない 』
「映画を撮りたい」「映画監督として食っていきたい」「映画監督です。メジャー業界経験はありません。」など、毎週多くの声をきく。プロデューサーのみならず、監督として成功している天才、投資家の元にも届いている声だろう。
しかしこれ、
日本以外ではあまり耳にしない、少数派の意見だと言うことを知っているだろうか。国際マーケットでは情報交換が盛んなので、国を問わずみな、「映画の企画開発方法」「映画監督への路」「必要なプロセス」を熟知している。
彼らはけっして、日本ほど恵まれた環境で活動しているわけでは無いそれでも、日常的に企画を開発し、自身の映画を撮っている。
重要なルールに従い、ミスを犯さず、プロセスを経ているためだ。
シンプルかつ重要なのは、「映画を撮ろうとしない」ということだ。
『 インディペンデント映画の実現方法 』
映画は“結果として撮る”ものであり、撮ることを目的に企画を開発してもそもそも、必要な要素が揃わない。“インディペンデント映画の実現方法”、を例えた小話がある。
「機械式腕時計のバラバラな部品を、コップの水の中に放り込め」
コップの水を揺すり続ければ偶然に偶然が重なりながらやがて、バラバラだった腕時計が組み上がる日が来る、という話だ。その可能性は、ゼロでは無い、と。いや、もうゼロだと言ってくれ。
重要なのは、重要なルールに従い、ミスを犯さず、プロセスを経ること。
設計通りに進めれば、不可能なはずが無い。
『 “映画監督”を名乗らない決意 』
多くの映画監督が、“映画で食っていこう”としている。
映画というのは非常に複雑な設計の先に存在する結果なので、そこにたどり着く過程においては、「映画以外で食う」ことに注力すべきなのは当然だ。
しかし多くの監督が映画に固執する余り、チャンスを逃している。
「資金さえ在れば掴めるチャンス」がある。「時間さえあれば追える目標」がある。「勇気さえあれば捨てられる常識」がある。
映画は必ず、撮る日が来る。
その日までは脇目を振らず、重要なルールに従い、ミスを犯さず、プロセスを経ることを最優先すべきだ。お金を用意する、完全に自由なスケジュールを用意する、何にも固執しない覚悟を持つ。それだけのことだ。
目の前の企画書、カメラ、会議、営業、交流、勉強、取材、そして“映画監督”という肩書きは、すべて無駄だ。ただ結果の「映画を撮る」という目的を後送りさせている雑事でしかない。
ひとつひとつの、プロセスを経ることが、最速のルートだ。
映画の企画開発と生活の両立ができる天才ならとっくに、
映画は撮れているのだから。
『 “常識”は、一般人のルール 』
信じる方がおかしい。
貴方が映画人なら世間の常識など、無関係ですら在る。
そこで、説明を端折って結果だけを列挙しておく。
・クラウドファンディング:
お金を集める方法、だという間違いを耳にする。クラファンは、「広報ツール」だ。自腹で達成させる余力で設定し、話題性で企画を知らしめる場所だ。また「販売予約窓口」という活用法もある。インディペンデント映画人に有効なのは、「恵まれない映画人用“募金箱”」としての機能。出逢う人、友人、親族に映画企画を語る日々に、関心を示してくれる方が現れるかもしれない。その瞬間、クラファンのリンクを共有し、“その場で”応援協賛をしてもらうといい。少額から纏まった額まで、複数の窓口を用意しておけば、日常的に、こつこつと映画資金を集められる。けっして、“募集して達成を祈る”ようなナマケモノにならないことだ。
映画監督になる日まで貴方には、プライド、なんて無い。
『 まだ、ある。 』
・会議と交際:
仕事をしている気分になる。「監督♪」と呼ばれる心地よさがある。仲間が増えて、可能性が広がっているように感じる。すべて、勘違いか不要だ。時間と会食の費用を使うだけ、目標の「映画を撮る」から遠ざかっていることに気付かねばならない。
・技術向上:
懸命に学んでいるその技術よりも優秀な、もうプロがいる。依頼する方が早くて効果的だ。調べに調べて冷や汗をかきながら、最新機材を購入している人もいる。それ、必要になってからリースすれば良い。本当は機材を抱えて、安心したいだけなのはバレバレだ。
・取材旅行:
断り続けても喧嘩をしても行かねばならなくなるのが取材であり、多くの場合、映画監督の取材は、ただの旅行である。アタマの中で脚本と照らしながら組み上げる演出プラン、無駄だ。ロケ地候補、出逢う人々、その状況は、遥か先の撮影時には様子が一変していて、使い道は無い。シナリオハンティング、という言い訳もある。いまごろ調べているならそのテーマは付け焼き刃であり、そのシナリオには相応しくない。
『 まだまだ、ある。 』
・資金集め営業活動:
最低でも、監督自身が誰よりも多くの現金を投資しておくことがルールだ。他人のお金で映画を撮ろうなんて、詐欺師に等しい。アパートメントを引き払って、敷金を手に入れてはどうか。家族全員の保険を解約し、実家を抵当に入れて現金を用意してはどうか。営業先で募集する金額は、監督自身が投じた金額、それ未満が最大だ。
・映画を撮る:
企画開発から配給販売を経て、三期決算満了までが、映画製作だ。期間中の全人生時間を賭す映画製作の中で、「映画を撮る」というのは全体の1/6作業量に過ぎない。楽しい楽しい、ご褒美ですらある。よって、そこを目的にすると、映画は完成しない。映画の苦しさは、“撮影後”にある。完成させる、とは編集完了のことではなく、配給販売そして、全マーチャンダイジングと精算の終了を言う。映画作品を生み出すことだけが目的の監督なら、それはインディペンデント映画ですらなく、ただの自主作品。全自腹で、非公開を徹底するのがプロフェッショナルに対するマナーだろう。
あと100項目書かねばならないがそろそろ、自分自身の胸が痛く、
画面が滲んできたのでもうこのへんで止めておく。
あぁ、ところで。
まだ日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。
■ 最新国際News:英国映画協会(BFI)、英国政府と共同で、インディペンデント映画用ファンドを設立
EU離脱でヨーロッパと連携できなくなったインディペンデント映画に資金を搬出するために、BFIと英国政府が、グローバル スクリーン ファンドを始動した。BFIは、「英国の独立系スクリーンの、国際的な活動と配給機会を後押しすることが目的」としている。資金は、英国政府の「文化/メディア/スポーツ省」が提供し、BFIが運営する。このファンドは「①英国映画の国際的な販売と配給の支援」、「②国際絵的な成長を促すビジネス戦略の支援」、「③国際共同製作の支援」の3つを柱として、投資を行うもの。「この活動は、英国の優れた独立系映画、各部門に不可欠な後押しとなるでしょう。英国の映画産業が国際的に高い評価を受け続け、英国経済に大きく貢献していることは明らかです。多様で優れた独立系映画の世界的な影響力をさらに高め、英国が誇る創造性と成功を実現していくことが重要なのです」という。このファンドには、オスカー受賞歴のある映画「恋におちたシェイクスピア」のプロデューサー、現在オスカーにノミネート中の「The Father」(アンソニー ホプキンス主演)のプロデューサー、が賛同している。「これによりインディペンデントの製作者たちはリスクを冒すことが可能になり、他のグローバルな大手スタジオと対等に闘える」という。007映画のプロデューサーは、「英国の大手映画製作の創造性を支えているのは、インディペンデントの力であることは間違いない」と証言する。BFIが運営する「グローバル スクリーン ファンド」は、映画会社への資金援助に加えて、新たな国際プロモーションとキャンペーンの推進と資金援助、さらに、国際的なデータを業界に提供するデータ ハブの研究にも投資する。 - APRIL 22, 2021 THE Hollywood REPORTER -
『 編集後記:』
まだ額は小さい。2018年の16億円に加えて、2021年の今回は11億円だが、継続的な働きかけが行われていることに注目している。また、それぞれの関係者が自ら申請できる応募窓口が用意されていることは画期的だ。
英国映画協会(British Film Institute/BFI)は、映画促進を目的に設立された世界最古の機関だ。会費の他、政府の資金で運営されており、発言権がデカい。米国映画協会(American Film Institute/AFI)は、そのコピーだ。
日本にも日本映画製作者協会や、我らが日本映画監督協会が存在するがどちらも“協同組合”だ。つまり、所属する会員の会費がほぼすべてであり、相互扶助組織以上のパワーが無い。また、零細インディペンデント映画スタジオが協力を要請するにはあまりにも、壁が高すぎるのが現状だ。
昨日、上質なアートシネマを上映することで知られていたミニシアターのアップリンク渋谷が、5月20日で閉館することを発表した。
理由は、コロナ禍の営業自粛要請による経営難だった。
メジャーを支えるインディペンデントの強さを証明するために映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。
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