ロイスアンサンブルの『ベビーサウナ』を見て

2017年8月4日 グランシップ 中ホール 大地
『ベビーサウナ』
ロイスアンサンブル(フィンランド)

サウナというテーマを用いた児童演劇。『アナのはじめての冒険』と同じように、舞台上の黒い幕の向こうでパフォーマンスが行われるが、開演直前までは靴を脱いだ状態で待っている。すると、サウナ服を模した、ベージュ色の衣装に身を包んだ演者がやってきて、「サウナ〜」とだけ言い、観客は黒い幕の中へと案内される。黒幕の中は、カラフルなバケツが並んでいて、演者は平たい金属製の桶を楽器のように叩きながら観客を迎い入れている。劇が始まる前にほかの演目同様、いつでも会場から出られること、携帯電話の電源を消すことが指示される。今回の会場はサウナに見立てられているので、サウナが暑かったら、とか、サウナで携帯電話は使えないから、といった工夫がされている。

フィンランドの伝統的なサウナを見せてくれるとのこと。サウナにあるものといえば焼き石。演者が石を手に持ち、それを動かす度に口でクリック音を出す。今度はもう一つ少し大きめの石を取り出して、今度はやや低めのクリック音を鳴らす。この二つを石とクリック音を交互に繰り返しながらリズムを刻み、石の質感と音と身振りによるイメージが統合される。それに加えて口でシューという音を立て、それとクリック音のコツコツという音が組み合わさってサウナの音楽が生まれる。このときの身振りは、蒸気を表現するように勢いがあり、また脱力して漂うよう。

ほかにもバケツを使ったバケツダンスがある。カラフルなバケツを両手に持って振り回すと、両手とも同じ方向に回すのか、反対方向に回すのか、それから回す速さの違いによって振り付けが生まれる。バケツのそこは、バケツの本体の色の対象となるような色になっており、余計にくるくると回したときの視覚的なイメージが豊かなものとなっている。バケツをひっくり返せば太鼓になる。また、バケツに足をつっこんで靴のようにして歩き、タップダンスのようにリズムを刻みながら足踏みをする。次に、これと同じようにバスタオルを踏みつけて、ずるようにしながら踊る。これをやったことがある人は多いだろう。バケツ、布と、足と地面の間に何かを置いて踊るという点では共通しているものの、それが何かによって動きも音も変わる。

このようにして、『ベビーサウナ』では、サウナにある個々のものの素材性が、音と身振りを駆使して表現される。劇のあと、サウナ体験といって、パフォーマンスで使ったバケツに水が入れられて、その水に触れることができる。おそらく普通の水だろうが、劇を見たあとであれば、同じ水でも豊かなものとして触れることができるだろう。

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