🔴いつも大安吉日148　〜土を食って生きるぼくら〜

【土を食って生きるぼくら】

朝から「タマ」が騒いでた

「ロクが粘土食った、ロクが粘土食ったぁー」って、ぎゃーぎゃー騒いでやがった
ぼくは冗談で、「タマも粘土くらい『パクっ』といけるっしょ」と言ってみた

「はっ？食えるわけないじゃん」とタマ
もちろん食えないことなんて百も承知だ
だけどタマが真顔でそう答えてきたんだ

「つれないヤロウだなあ」
そう思ったか思わないかくらいの間髪入れずなタイミングで、タマはこうつづけた

「まぁ土なら食えるけどね」

つれるヤロウだった
毎日すごいスピードで成長して大人に向かっていくこどもたちだけど、ちょくちょく飛びだすこんな珍解答に心が和む

「どうかいつまでも土を食いつづけられる人であっておくれよ」

ちなみに「タマ」は次男の木珠（こだま）ね
「ロク」はうちの猫なんだ

🔴やりたいことだけやること

「梅雨明けたんじゃなかったんかいな」

たしかに気象庁から発表なんてなかった
でも何日か晴れたからぼくはそう思ってた
そう思い込んで気分を晴らしたかった
それにぼくはお国の言うことを素直に鵜呑みになんてしないんだ
⋯ まあ、まだ何も言ってなかったけどさ

雰囲気からしたら、どこもかしこも間違いなく雨って感じに思えるほどの雨空

でもさ、よくあるこの地区だけのおかしな天気、「古谷天気」の可能性に珍しく期待した

そしてぼくは畑に向かった
少しばかり弱くはなったけど雨は降ってた
とりあえず田畑チェックからはじめる

晴れもあったからか、また一気に成長した
野菜も米も、雑草はそれ以上に育った

ぼくはそうげんが生まれてからこれまで、ずっと畑と田んぼはつづけてきた
米はつぎの収穫まで食えるように、大豆やさつまいもは加工したりできる量を採ってきた

でも正直、それ以外の野菜はほぼ収穫なんて出来てはいなかった
家の畑は石だらけの獣だらけだし、メインの畑が家から遠かったこともある
それにまわりから野菜はいただけたんだ
頼まれごとが忙しくなりすぎて、家を空けることが多かったってことが大きな理由かな

今年は田んぼも畑も五分で行ける
唯一の現金収入だった伐採も辞めた
頼まれごとも、楽しそうな先につながりそうな、アンテナが反応したものだけにしてる
九割五分は「暮らしのこと」だけやってる

イメージする未来に近づくことだけ
ほんとにやりたいことだけやってる
だからもう言い訳なんてできないんだ
できない理由はもうなんにもない

結果、いい感じに育ってるんだ
ぼくの畑史上いちばんいい育ちっぷりだ
「足肥やし」が効いてきてるよ

🔴不思議ってたのしいね

種蒔きのタイミングや定植時期
長雨や日照不足に、高い標高での低気温
いろんな要素が重なってなのかまだ収穫はできてないけど、そろそろはじまる予感がする

雨に負けずにがんばってくれたとまと

雨の恵みでしっかり発芽した人参
きゅうりとインゲンも仲良く絡み合ってる

えごまも「ごはん泥棒」が作れそうだ
さつまいもも元気になってきたし、はじめてのヤーコンも順調みたいだ

そしてうれしいのがかぼちゃなんだ

かぼちゃは過去数個しか採れたことがない
ちっさいかわいいのがいくつかだけ
それが今年はエリアをどんどん拡大させて、他の畑まで伸びていく勢いだ

でもね、なんだかエリアばかり広げるだけで、「実」はそんなについてないんだよね
ともだちに聞いたら教えてくれた
「かぼちゃは受粉のお手伝いをしてあげたらいいよー」って

こんなことも知らなかったよ
雨も弱いからまずやってみたよ

まず雄花と雌花の見分けから
これも初めてで不思議な世界だった
雄花はメインの茎から細い茎が「シュッ」と立ち上がって、その先に花が咲くんだね
雌花は花の下にちっさい丸い実がついてる
わかりやすく違うんだよね

ひとつ不思議なポイント
受粉する前なのに「実」はついてるんだよね
そのまま受粉できないと実は「コロリッ」と落ちてしまうらしいのよ
受粉してから膨らんできて実がつくわけじゃなかったんだよね

雄花も雌花も咲いてるタイミングで作業開始
咲いてる雄花をひとつ拝借させてもらう
雄しべと雌しべをくっつけやすいように、雄花の花びらをとってしまう

雄しべは綿棒みたいに軸の先っぽに、「ぼわっ」と花粉があるところがくっついてる
雌しべはそれを受け入れるように、「かぱっ」と先っぽが広がっている

「うおー」ってこれだけで感動する

それをやさしく「ちょんちょん」する
これで人工受粉完了なんだ

これだけなんだけどすごくいいっ
かぼちゃ作りさせてもらった
いのちのはじまりのきっかけ

かぼちゃがより一層愛おしくなる
受粉をしてくれる蜂や虫に、ぼくの気持ちは少しだけ近づく
雑草ってまとめられてる草花にも、それを育むおひさまや雨にも想いがめぐる

それぞれに役割があって意味がある
なにかひとつでも欠けたら成り立たない
余計なことなんてなんにもない
おなじいのちの「わ」の中にみんないる

そういえばこの畑だって石がものすごい
でもしっかり野菜は育ってくれている
一概に「これは○でこれは✕」とは言えない

この畑はこの畑のやり方でたのしもう

🔴土を食う

いつもお世話になってる、「日本一高い米」を作っている人の田んぼに行ったときの話し

「完全に無肥料で、刈り取った藁も田んぼに還さずにつづけてる田んぼなんだよ」
そんなスタイルで十年近くだったかな、続けている一枚の田んぼを見せてもらった
とてもきれいで気持ちよかった

「なにも足さない田んぼの米は、何でできるかわかる？」
そう聞かれてもぼくはわからなかった

「土だよ、土が年々低くなってきてる」
そんなことがあるんだなって思った
カタチを変えてつながる神秘だね

ここで昨日の朝とつながった
あながちタマのひとことも間違ってない
ひと手間省けてその方が手っ取り早い

「やつには土を食わせておこう」

今日も朝から雨で土もぬかるんでるね
土ひとつとってもいろんな味わい方があるな

ではみなさん今日もすてきないちにちを

五穀豊穣　子孫繁栄　
大安吉日や　さかいひろし
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