🔴いつも大安吉日89　〜いいね、それいいねえーの世界〜

【いいね、それいいねえーの世界】

いつも通り眠そうな顔しながら起きてきた
「火がまだ着いてるかな」
そう言ったまま外に出て行って帰ってこない

夜中にはけっこう雨の音がしてた
寝る前にそうげんが焚べた太い薪も鎮火してるだろうなってのがぼくの読みだった

しばらくすると元気な顔でもどってきた
「赤いのが残ってたからまたつけるよ」
ぼくも外に出てみると煙があがってた

太い薪が雨よけになって下の熾（おき）に直接雨がかからなかったんだ
あとでそうげんがそんな風に話してた
狙ったわけじゃないだろうけど、そんな技もあるんだな

前の日の夜にふたりで火あそびしてたときは、あんまり火がないところにいきなり太い薪を入れたから「こりゃーつかないかな」って思ったけどしっかりついた
結果長持ちしたし、朝まで火を絶やすことなくつなげることができた

マッチもライターもない時代は火をつける作業は大変だったはずだ
「石でやってたんだよ」ってそうげんは話してくれたけど、それも毎回は大変だ
だから火を残すことを学んだんだろうな

寝る前に熾に灰をかけて、酸素が供給される量をギュッとしぼるんだろう
朝起きたら灰を少し払って息を吹きかける
そうやって一日がはじまったんだろうな

群馬のお山のおうちのときは囲炉裏でそうやって朝を迎えたときがあった　
あんまりうまくいかなかったけどさ
部屋も灰だらけになってたな

ぼくは薪で暮らして八年目かな
それなりに火のこともわかったつもりでいた
どうしたら強火になるか、中火を維持するにはどうすればいいか、弱火でコトコトするには空気口をどれだけ開ければいいか
それくらいはできるけど、もしかしたらもっと薪を使わずに、もっとバッチリやれる技があるかもしれないんだよな

薪で熾すちいさな火は、ずっとずっと昔からそのカタチはかわらないだろう
人間が火を使いはじめてどれだけ経ったんだ
たった八年間の薪暮らしで火のことがわかったような気になってたよ

こどもやともだちがうちで火を扱うのに、やる前から止めちゃってることあったな
「こんなときはこうするもんだ」
やっぱりいつの間にかそんな風に決めつけちゃってることってあるんだよな

それがあたらしい世界の入り口をずっと狭くしちゃってるんだよな

🔴はじめてのマコモ作業

田んぼに生えてるマコモの株分けをした
ちいさい範囲に草といっしょに生えてる

まずは自己流でいきなりやってみる
株元が思ったよりもずっと大きい
手を突っ込むと根っこはススキみたいだ
固くてつながってて、手でなんとか分けようとすると新芽が切れてしまう

ここで調べてみた
株ごと掘り出して鎌で割いて分けるパターンをやってる人が多かった
時期ももう少し早く新芽が出る前だったりするのがやっぱり多かった

ぼくはマコモ農家じゃないし、新芽がすでに出まくってる
だからやれる範囲でゆるーく株分けした

マコモの歴史や浄化作用、お茶やマコモダケのこと、これからやりながら学んでいこう
ちょっと調べるだけでけっこうすごいよ

🔴まずはこのパターンで

そろそろさつまいもの苗がやってくる
その苗を挿すための畝をつくる

ギリギリでめぐり会えた田んぼの下につづく畑も準備はギリギリだった
土の中に漉きこんだ草が青くはなくなったけど、まだカタチは残ってる状態
畑の表面のその草だけはよけておく

さつまいもは水はけのいい乾いた場所が好きらしく、元田んぼのこの畑で低い畝だと水がたまりやすいので畝を高めにしてみた
水の抜けやすそうな棚田のいちばん外側に畝を作ってみた
まずはこれでやってみよう

無事に収穫できたら大好きな干し芋いっぱい作りたいなあ
長崎で食べた「かんころ餅」ってやつはさつまいもと餅だから、これもやりたい

久しぶりに暗くなるまで鍬を振った
二年ぶりに畑作業と田んぼ作業に明け暮れる
トラクターと違って、ただただ鍬を振るだけ
体の使い方は意識して、まっすぐ鍬をあげて、まっすぐ振りおろす
手がパンパンになった
「やった感」が気持ちよかった

🔴それいいねえーの世界

火のある暮らしと農ある暮らし
どっちもやることはシンプルだ
だけどとっても奥深くもある

火の付け方に薪の焚べ方
畝の作り方に苗の植え付け方
深く深く探っていこうとすれば、いくらでもどこまででもいけそうだ
本やネットにはたくさん情報がある

もちろんベースになるものはあると思うし
自分の中で大事にしているものはある

木をいただいて薪で暮らす
田んぼと畑に薬は使わない
このへんはぼくの中では絶対だ
だけどあとのことは自分の暮らす場所やそのときの状況にあわせてバランスよくいきたい

だれかを傷つけたり、自然になるべく負荷のかからないやり方で

自然農で草も抜かない田畑もやってみる
トラクターを使って耕してもみる
いろいろ試して、いろんな人の話しを聞いて、ここでのやり方を探ってみる

「こうしなきゃいけない、こういうもんだ」
自分に人にもそう思っちゃうことはやっぱりまだよくあるんだよね

でもいつも意識はしておきたいんだ
「こうしなきゃいけない、こういうもんだ」
それがそこにあるはずのあたらしい世界を見えないようしちゃってるかもしれないことを

なにかをはじめるとき、そこにいろんな意見があるのはありがたいことだ
みんなの世界が見えるんだからね
それをありがたく参考にさせてもらって、ぼくはぼくの世界を作りあげていこう

「これもアリだ、なんでもアリだ」

四十歳になったおじさんは、今日もはだしで泥にまみれてきます

今日もいい日になりますように
みなさんもすてきないちにちを

五穀豊穣　子孫繁栄　
大安吉日や　さかいひろし
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