テセウスの船

「今年小学生がなりたい職業第一位は”政治家”でした!小学生が今憧れる職業は、やっぱり政治家なんですね〜。これで三年連続の一位ですよ」

小学生がなりたい職業を政治家にしたのは、間違いなく彼だ。

彼がしたことは、ただ1つ。

「満15歳以上から満45歳”以下”の国民が選挙権を有する」というマニフェストを掲げ、見事当選し、そしてそれを実現したのである。


2015年。

公職選挙法が改正され、投票できる年齢が18歳以上となったが、政治の主な票田が高齢者であることに変わりはなく、政治家は高齢者寄りの政策を取り続けていた。

彼は選挙演説でこう言った。

「私は社会の授業で”一票の格差”について学びました。ご存知のように”一票の格差”とは、それぞれの地域の有権者の数の違いが一票の価値に差を生んでしまうということです。

例えば100人で1人の国会議員を選出するA町と1000人で1人の国会議員を選出するB町があったら、B町の一票の価値が小さくなってしまう。

確かにそれは正しい。

しかしですね、その説明を聞いた時に、私はふと思ったのです。今後日本の高齢化が進んでいった時、若者の一票と高齢者の一票。果たしてそれは同じ一票なのかと。

日本がもし”若者の一票”に目を向けることができたのなら、日本は必ず変わると私は信じています。強いリーダーシップを持った人間を探す必要はないのです。システムが変われば、必要な人間は必要な場所に自ずと現れるのです。皆さん、どうか”清き一票”を!!」


たった1つの法改正で、彼は国を変えてしまった。

国会議員の平均年齢は大きく下がり、投票率は信じられないくらい上昇した。議員の今や半数以上が女性議員であり、国会議事堂には保育所が併設されている。海外国籍を持った議員の割合も少しずつ増えている。有事の際は、クラウドファンディングで世界中から資金を集め、必要な人や場所にすぐに届けられるようになった。予算の配分が変わったことで、勢いのあるベンチャー企業が多数生まれ、大学の研究費は大いに増やされた。海外から優秀な学生が続々と日本に来るようになった。


日本は今輝いている。





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