
Photo by
takasim_cafe
#39 シフォンケーキ
「なんでイライラしちゃうんだろう」
私は彼といると機嫌が悪くなることがある。
「ちょっとしたことなのにさ、ムスッとしちゃうんだよね。「大したことじゃない」って頭では分かっているのにさ。なんか雰囲気を悪くしちゃったりするんだ。ねぇ聞いてる?」
シフォンケーキに夢中になっているのは、私の数少ない友人。友人A。
彼女は「私がほしい答え」を持っていることが多い。
そう、大事なのは「答え」じゃない。いつだって「私にとっての答え」なのだ。
「うんまっ。このシフォンケーキ、めちゃくちゃうまいんだけど。食べてみって。」
たしかに、美味しい。
「イライラしちゃう理由が知りたいの?んーそうだなぁ、なんだろうね、わかんないけど、期待してんじゃない?彼にさ。」
「期待」
私のイライラの中身は、彼に対する「期待」
「ムスッとしたら、「どうしたの?」って聞いてほしい。大したことじゃないけど、「ごめんね、もうしないよ」って言ってほしい。そして私はシフォンケーキがあと2個ほしい。」
友人Aの言葉は、不思議と私の耳にスッと届く。
「すみませーん」私は店員を呼んだ。
「このシフォンケーキ、もう1つもらえますか?」
友人Aの目が輝いている。
「いや、私のね」
「相談のって損したわ」
「期待しすぎなんだよ、ばーか」
最後の言葉は、自分に向けて。