プロダクト開発現場でのROIの考え方
ROIと聞くと「どれだけ投資してどれだけ儲かったか」といった銭勘定が最初に思い浮かぶかもしれませんが、プロダクト開発の現場でもROIという考え方を適用できます。
6月に受けた認定スクラムプロダクトオーナーのトレーニングで、プロダクトオーナーは「スクラムチームのROIを最大化すること」が責務であると説明され、ROIを意識するマインドセットが鍛えられました。
ROIは「ヒト・モノ・カネだけで語れるものではなく、その範囲はもっと広く捉えることができる」と学び、それ以降ROIを強く意識しながら日々を過ごすようになり、現在活用している捉え方をご紹介します。
プロダクト開発現場の「Return」と「Investment」
私の中では「Return」と「Investment」を、以下のように捉えて活用しています。
Investment:タスクの実行
Return:何を得たいか
なんらかの機能を企画・開発するとき、たいていは改善したいKPIが存在します。例えばnoteでいうと「継続率を向上したい」というサービス課題に対して、「スキ」という機能を思いついたとしましょう。そのとき以下のようなことを考えていると思います。
「読み手の反応を書き手に届けることで、書くモチベーションが刺激され継続するはずだ」という仮説があり、
Investment:スキ機能の実装
Return:継続率の向上
となります。
しかし、まだこれではReturnをちゃんと得られるか(成功するか)が不確実な状態なので、Investmentする意思決定するには少し困ってしまいます。
※FacebookやTwitterの「いいね!」の事例が既にあるのでInvestmentしやすいのですが、先行事例がない機能の場合
分解することで「Investment」を小さくする
例えば前述の「スキ機能」の不確実性として考えられることは、
・読み手は、アクションを起こすのだろうか。どういったときにアクションするのだろうか
・書き手は、反応を数値で表現することがモチベーションを刺激するのだろうか
最初に思い浮かぶアイデア・仮説は粒度が大きいことがしばしばあるので、粒度を細かく分解し、不確実性を1つずつ解消することでInvestmentを小さくできます。アジャイルの用語で言うと、エピックを複数のユーザーストーリーにする行為です。
ユーザーストーリーは字のごとく「物語」なので、前後関係があります。(詳しくはユーザーストーリーマッピングなどを参照ください)
スキ機能は読み手のアクションが、不確実な要素として先行します。
そこで読み手にフォーカスして「読み手に対して記事にスキボタンを提供したい。なぜならアクションする動機を確かめるためだ」というユーザーストーリー(タスク)を作成することで、Investmentを小さくできます。
Investment:読み手に対して記事に「スキ」ボタンを設置する
Return:読み手がアクションするか。どんな感情でアクションするのか
アクション数は定量データから学び、どんな感情でアクションするかはユーザーインタビューやアンケートから学ぶことができます。「気に入った記事を保存できると思った」のようなインサイトを得られるかもしれません。
ポジティブなReturnを得られてから、書き手側の不確実要素の検証に進みます。
余談ですが、スタートアッププロダクトではMVP(Minimum Viable Product)と呼ばれることがあります。MVPのステップで得られたものから学習し、改善あるいはピボットを行うことで、より本質的な価値に近づけMLP(Minimum Lovable Product)の発見・到達目指しいていきます。
インサイトを発見する練習にも
プロダクト開発現場のROIと題しましたが、仕事だけでなく人が何ら化の活動を行うとき、そこには必ず活動というInvestmentに対して、何らかのReturnを求めていると考えられます。
例えば、このエントリーを書くという活動にもROIが存在します。(無意識・無自覚なことが多々あります)
「エントリーを書く」というInvestmentに対して、
・文字に起こすことで頭を整理したい
・界隈からの認知を高めたい
・自身の思考のクセを相手に伝えたい
・余暇時間の退屈な時間を有意義にしたい
のようなReturn(得たいこと)を期待しているはずです。
このように考えると、ROIという言葉がぐっと身近な存在に感じられるのではないでしょうか。インサイトを探る頭の体操にもなるので、ぜひ身の回りの出来事で試しに考えてみてください。