鈴木悦夫『幸せな家族 そしてその頃はやった唄』(中公文庫)
…あー。書いてみようと思ったんですが、長篇ミステリのレビューって、めちゃくちゃ難しいんですね。「1989年の作品で」「あの有名な」「フーダニットというよりは」と書いただけでもなんか読み了えた自分としては「それは全部ネタバレかもよ!」という気がしてしまう。なので感想は「面白かったのでぜひ読んでください」としよう。ジュブナイルとして書かれているのですらすら読めます。
ちなみにこの文庫を購入される場合は表紙に仕掛けがあるので帯付きを買うことを強くお勧めします。
以上は、X(Twitter)やAmazonに書いた感想。
以下には、物語の核心にかなり触れていますので、
絶対に読了したあと読んでください。
読んだあとなら楽しめる文章になっていると思います。
読み終えましたか?
ネタバレありますよ?
本当にいいですね?
このミステリの下敷きはあきらかに、あの有名な古典的作品『〇の悲劇』と『〇〇〇〇〇殺し』なので、犯人はいやでもすぐにわかる。そもそも「フーダニット」のミステリとして書かれていないのだ。「ハウダニット」に眼目が置かれている。少なくともぼくはそう読んだ。
この作品が1989年に書かれた、というのもぼくには印象的で、あのバブル期のマスコミへの嫌悪もあったのではと思う。読者は二つの「How」=「なぜ、こんなことをしているのだろう?」という疑問を持ちながら読み進めていくことになるが、ぼくは「大人たちの真意」があっさり明らかになったとき、得体のしれない寒気を感じた。
当初は児童文学(ジュブナイル)として書かれたということだが、もし、これを「まったくミステリを読んだことのない」状態で読んだとしたら、男の子も、そして女の子も、「一生忘れない本」に「なってしまった」んじゃないかな、と想像する。