矢樹純『妻は忘れない』(新潮文庫)
地に足の着いたミステリ短篇集。
作者が女性なので全ての物語に「妻」「母」「娘」「妹」「姉」などが登場し、語り手も女性である。大がかりな殺人トリックなどはなく、日常生活での謎が主題で、このリアリティは、読者が経験を積んだ女性なら身につまされることも多いのではないかと感じた。
ただ一篇、ちょうどまんなかに収録されている「裂けた繭」だけは毛色が違う、かなり暴力的であり、エッヂの効いた短篇なので注意した方がいいかもしれない。個人的にはこれが一番面白く読めました。