ソーシャルネットワーク理論 #52
2021年になりました。
明けましておめでとうございます!!本年もこのnoteをどうぞよろしくお願い致します。
さて、2021年最初の投稿となります。
年明けに以下の記事が新聞紙上に掲載されていました。
みずほ、副業で武者修行 リスクと利点てんびんに(2021年1月4日日本経済新聞)
東京海上、全社員に副業推奨(2021年1月5日共同通信)
東芝、幹部候補をスタートアップに出向 21年度から(2021年1月3日日本経済新聞)
大手社の中でも副業を解禁したり、スタートアップ企業などとのオープンイノベーションに取り組む企業が増えていると思います。
特に最近は副業に対する関心が高まっており、これまで二の足を踏んでいた企業も考え方を変えつつあります。
この背景には、VUCAの現代において、DX などの進展がみられる中、「イノベーション」 が企業の今後の命運を左右するという危機感があると思います。
VUCA(ブーカ)とは4つの単語
V olatility(変動性)
U ncertainty(不確実性)
C omplexity(複雑性)
A mbiguity(曖昧性)
から頭文字をとって作られた単語であり、「予測不能な状態」の社会経済環境を表す用語です。
従来日本の企業は「カイゼン」と呼ばれるオペレーションの見直しの積み重ねを競争力の源泉としてきました。
これによって、「キャッチアップ経済」の高度経済成長期を経て、経済を急拡大させました。一時期は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代もありました。
一方、DX を中心とした現代社会は、「イノベーション」が不可欠となっており、この点で日本は諸外国に後れを取っていると言われています。
そのため、近年の経済成長率を見ても日本は先進国の中 でも一人負けの状態にあります。
イノベーションには、「既存の知と新しい知の組み合わせ」が必要となりますが、人・組織 には認知に限界があり、社外に出ないと「新しい知」を学ぶことができません。このこと が、「副業」や「出向」を推奨する理由となっていると思います。
ちなみにここでいう「新しい知」とは、その企業にとっての「新しい知」のことで、ある企業にとっては「既存の知」となります。
近年話題を集めている経営理論に「ソーシャルネットワーク理論」というのがあります。
ソーシャルネットワーク理論は、「ビジネスは、他者との繋がりの範囲内で行われ、その関係性に影響を受ける」ということを前提としています。
つまり、誤解を恐れず、超簡単に言えば、「人脈(企業と企業の繋がりを含む)がビジネスの範囲を決める」ということを表した理論です。
そのソーシャルネットワーク理論の柱の一つとして、「strength of weak ties(SWT:弱い繋がりの強さ)」と「structure hole(SH:ストラクチャー・ホール)」という理論があります。
この両理論は、同じ現象を異なる角度から見たものとして、理解いただきたいのですが、この両理論が言わんとしていることは、
ソーシャルネットワーク(人脈)を通じて、情報・知識・噂話・アイディアなどは伝播するが、その量と速さは、弱い繋がりの方が(強い繋がりよりも)優位である
です。
つまり、
「緩い繋がり」の方が、人脈を広げやすく、多様な情報が効率的に得られる
ということです。
先程述べた通り、イノベーションには、「既存の知と新しい知の組み合わせ」が必要ですが、「新しい知」は「既存の知」より距離が遠ければ遠いほどイノベーティブになります。
冒頭の各社の社員への期待は、社外でネットワークを作り、新しい知を学び、それを社内に持ち帰って、既存の知と融合し、従来の考え方にとらわれない「イノベーション」に繋げて欲しい、ということなのだと思います。
社員を「副業」や「出向」で社外に出すことは、本業への悪影響や、情報流出、転職等のリスクが考えられますが、それ以上にこれからの時代においては、社員を社内の限られた世界に留めておくことの方がよりリスクだと判断しているのだと思います。
社内の「強い繋がり」だけでは、今のこの時代を乗り切ることが難しくなっているのは間違いなさそうです。
参考文献:
「世界標準の経営理論」入山章栄著(ダイヤモンド社)