石原慎太郎『生還』の書評
ヘルシンキの図書館には、ぼくが知る限り、石原慎太郎の本は一冊しかない。その本は今、ぼくの手元にある。
この本を近所の図書館に取り寄せるとき、ヘルシンキの図書館システムはもちろん日本語に対応していないので、『Shintaro ISHIHARA, SEIKAN』とだけ記されていた。手に取ってみて、『生還』という日本語をはじめて眺めた。なるほど、『星間』でも『精悍』でもなく、『生還』か。表紙の挿絵も、なんだか神秘的だ。
このように、ぼくとこの本の出会いは、非常にロマンチックだっ