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「私ね、実は知ってるんですよー」 「何の話? 」 「先輩、noteで変な小説を書いてたりしますよね? 」 「えっ・・・・・・」 彼女のその口調は、まるでこちらのすべてを見透かしているようだった。 そう。ぼくは、noteで小説を書いている。この一年でかなりの数の作品を投稿した。これまで、たくさんのスキとコメントをもらった。でも、それはインターネット上の話であって、知り合いの誰にもそのことは話していない。 いい歳した男が、ヘンテコな小説を書いている。それが
窓から見える校庭は、銀杏の黄色で埋め尽くされていた。 季節が変わっても、授業の退屈さは一年中変わらない。そんな気怠さにつつまれて授業を受けていると、突然、誰かの強い視線を感じた。 教科書から目をはずし、教室内を見渡してみると、窓際に座る花沢さんがボクのことをじっと見つめていた。 「あ・・」 一瞬目が合ってから、花沢さんは照れ顔ですぐに目をそらした。ボクはなんだかすごくドキドキした。 花沢さんは単なるクラスメイトだ。当然、普段からお互いを
「また雨か。ああ、最悪や」 明日の天気予報を見た風花はそう呟いた。気象予報士のお姉さんは、雨予報の時は暗い顔で話し、雨のち晴れ予報の時は無表情に話し、晴れ予報の時は明るい顔で話す。風花は、雨が大嫌いだったから、暗い表情で話すお姉さんも大嫌いだった。 「なあ、おかん。新しい傘買って」 「え、あの傘まだ使えるやろ? 」 「あの傘、無地の紺で地味やし。傘の内側が青空になってるやつあるやん? 私あれほしいねん」 「そんな変わった傘、いったいどこに売ってんの? 」 「ほら、
私の彼氏は、宇宙人だ。 こんなことを言うと、たいていの人が一瞬固まる。この子は不思議ちゃんに違いないという目をする。でも、本当の話。宇宙人なのだ。 その証拠に、彼氏はいつもテカテカ光るシルバーの服を来ている。謎のペンダントを首からぶら下げている。大きなサングラスみたいな眼鏡を必ずかけている。本人はいつもこう言う。宇宙人なのだから、それっぽいファッションをするのは当然だ、と。 彼の見た目は三十代の日本人男性だ。しかし、ある時から心が宇宙人になった。
「お金ってさ、ないよりあったほうがいいじゃない? 」 すぐ後ろの席から、胡散くさい会話が聞こえてくる。 「不労所得って聞いたことある? うん。あっ知ってるよね、うんうん。ね? そうだよね」 男は慣れた口調でハキハキ喋っている。おとなしそうな若者Aと、人の良さそうな若者Bが、黙って話を聞いている。もはや、会話ではなく、一方的な演説だ。 男はなかなか通る声の持ち主で、聞きたくなくても耳に侵入してくる。耳障りだったため、僕はそのカフェを出ようかと思ったが