美しきかなピアノ曲かな
David Bowieの名盤【Hunky Dory】聴いていてA面ラストで針が往復を繰り返した。『Quicksand』
もちろん何度も聴いてきたアルバムだけど、名曲揃い踏み過ぎてついつい集中力を切らしたりだった。
世に出ている数多の楽曲の中で、アーティストは作った刹那「この曲いけるぞ!」と確信しただろうな、と思う名曲がいくつかある。
ボウイの曲にはそう思えてならない曲があまりに多すぎて、ついつい有名曲に霞んでしまう名曲がままある。
そのひとつがこの『Quicksand』だと思う。
ピアノの使い方が実にうまい。
私はそういう曲がとてつもなく好きなのだ。
ジャズのように弾きまくる曲も好きなのだが、ミニマムな使い方をしたピアノ曲に頭を打たれる。
このアルバム【ハンキードリー】はそんな曲が多く収録されているが、Quicksandはその手法で言えばズバ抜けているように思う。
そこで思い出したのがこのアルバム
中でも4曲目の
『Sea of Teeth』
このピアノが私の中では最高峰に好きなのだ。
私はピアノ弾きではないからテクニック的なことはわからないが、誤解恐れずに言えば、
「このピアノなら私でも弾けそう」な気がする。
それくらいシンプルな旋律。
このアルバム通してミニマムな作りになっていて、特に1〜4曲目までは歴史に残すべきトラックだと思う。
①がタイトル曲
もうこの曲だけで言うことはないほどのデキなのだが、まるで繋がるように
②Gold Day
になだれ込む。
①から通して②の途中で初めて登場するドラムのスリリングさ。
このアルバム通して私にとってこのドラムのサウンドがツボなのだ。
少し練習すれば私にでも叩けそうなシンプルなドラム。
さっきのピアノと言い『センス』でしかない。
音楽においてミニマムとはセンスのことかも知れない。
そう言えばコーネリアスも【Point】辺りからミニマム志向に変わってゆく。
私は音を詰め込みがちなので、こういう作りに非常に感銘を受けるのだ。
ここに並べるのは恥ずかしいが、自分で出した音源【ナヤズオリジナルス】
のバンドサウンドの中では
『メンフィス•エルヴィス』が余計な音が一番少なく後から聴いたら一番好きだった。
いや、ひとつ言い訳をすれば、レコーディングもマスタリングもすべてセルフでやったもんだから、なんとかプロRECに負けないよう音圧を増幅するためにオーバーダブしまくったのだ(当時大瀧詠一氏の音楽に傾倒していたのも譲れない事実)。
もっとシンプルで良かったのだな。
いい意味で"たかだかロックンロール"なのだから。
ビートルズもそのセンスに長けている。
あれだけ音をたくさん重ねているのにどの音も聴こえる。
レコーディングの妙(ジョージ•マーティン、ジェフ•エメリック)ももちろんあるのだが、やはりセンスよく弾きすぎない、叩きすぎないところにあると思う。
sparklehorseの【It's a Wonderful Life】
私の中ではアルバム10選に入るかも知れない作品。
前回の記事【たぎり屋、アニメにハマる2】
にも登場した人物"K氏"に教えてもらったアルバムである、当然。
当時色々あって死にかけていた氏は私に
「死のうと思ったけど死ねんかった。S(奥さん)と泣きながらセックスした。生きてて良かった。スパークルホースが死にかけの声で『人生ってすばらしい』って歌う気持ちが今はわかる」
とメールしてきたことをいつもこのアルバム聴くと思い出す。