歯医者の陰謀
「虫歯、銀歯が一本もない」
これが唯一の自慢だった。
子供の頃から歯科検診などでいつも褒められる歯を持っている。
「すばらしいっ」とも何度も言われた。
たまに痛む時があって、歯医者に駆け込んで検査するも、どこも悪くないとの返答。
これも何度もあった。
当時の歯科医曰く「顔がシュッとしてるひとにこの現象が起こりやすい」と。
「あごが細く、歯全体が内向きに生えているので噛み合わせの問題で痛む時がある」と言われ、「そらしゃあないなぁ😏」と痛みが治らないことに気分よく帰宅したこともあった。
その数年後いよいよ本気で痛み出して診てもらうと「虫歯です」と告げられた。
ただそれは一般的な虫歯ではなく、やはり噛み合わせの問題で、欠けてしまったところから虫歯になったのだと診断された。
詰め物をすることになった。
今まで一本も銀歯がなかった上に、曲がりなりにも人前(ステージ)で口を開けることが頻繁にある。
今更銀歯もなぁ、と言うのもあり悩んだ末、白のセラミックにした。
6万かかった。
果たして治療は終わったのだが、一番奥の歯で、しかも上にちょこんと載せるだけで、銀歯でも見えなかったのではないかな、と一抹の後悔はあった。
虫歯がない理由は、どうやら唾液の質が異常に高いからなのだそうだ。
真面目に歯磨きをしているかと聞かれると恥ずかしく思えるほど磨き忘れて酔っ払って寝てしまうことが多い。
もっと若い頃は朝に歯磨きすればよいと、夜は磨かず、しかもチョコレートなどを食べてから就寝することもしばしばだったが、虫歯にはならなかった。
元から歯が強いのだ。
今はそんなことはしないが、たまには忘れる。
と言うより酩酊に敗退している。
リスクとしては着色が酷い。また歯石が多く付く。
歯を守る唾液の成分は着色力も優れているらしく、煙草は7年ほど前にやめたが未だに歯医者にすら喫煙者と疑われるほどだ。
歯石も然りなのだそうだ。
その治療した歯がまた痛む。
予約を取り、その数時間後に違和感があったので鏡で見ながら指で突いてみると、6万の詰め物が割れて、4千円分ほど欠けた。
予約した日を待った。
名前が呼ばれ、それを説明して治療が始まった。
2年保証が付いていたので、セラミック代はかからない。
型をとって今は借り詰め物を埋めている状態なのだが。。。
麻酔してうがいすると、口が閉まらず水が飛び散る。
私の場合奥歯なので、奥に麻酔をしているので口の横から飛び散るのだ。
それは前回治療した時からそうだった。今回もそうなるのではないかと心配したが案の定だった。
そんな時に限ってハンカチを忘れて来ていた。
何か案はないかと考えてある素晴らしい方法に気がついた。
手で口を閉めるのだ。
お口チャックの塩梅だ。
それでまったく飛び散らなくなった。
勝った。
この治療とは別に、前述した歯石が弊害を起こしているのだそうで。
今年の初めから毎月歯医者に行ってクリーニングしていた。歯と歯茎の間に潜んでいる歯石を取り除くのだそうで、これはめちゃくちゃ痛かった。
「痛かったですか?」と聞かれ、
「拷問なら全部吐いてます」と答えた。
今通っている歯医者はどの方もわりとフレンドリーな方で、私もどちらかと言うとお店などにおいても店員とフレンドリーに話す方なので思いついたジョークを飛ばしスタッフを笑わせたりするのだが。
治療中にフリが来るのだ。絶好のフリだ。
最高の返しを思いついているのだ。
しかし返せない。
何を隠そう治療中だからだ。
口が使えない。
これほど悔しいことはない。
まあ私の気持ちなど知る由もなかろうと。泣く泣く無駄になったボケをうがい器に流し(タイミング外して返すほど野暮ではない)、またクリーニングが始まる。
そこで気付いた。
スタッフと来たら別にフリではなく、普通に質問して来るのだ。こちとら返せないことをわかっていながら。
なるほど。これは歯医者(または歯科衛生士)の特権を乱用した新手のプレイなのだ。
こちらが返せないことをわかっていながら質問を投げかけ、次の話題へと踏み切り、自分の中で納得しているのだ。
患者に人権はない。
歯科医(あるいは歯科衛生士)の独裁国家なのだ。
俺は気付いたぞ!
歯医者はそう言うもの達の集まりだったのだ!
いやはや。
いつもお世話になっております。
※ちなみに私はMではないので、快感の類はない。