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2023 J2リーグ第1節 東京ヴェルディVS ツエーゲン金沢 レビュー 変わらずに目指す「最高」 

2023 シーズンのスローガン
「最高!!-史上最高の最高を目指せ!!-」

J1昇格!と大っぴらにホームページなどで言っている訳では無い。過去の最高順位は2019シーズンの11位。一桁順位でも「最高」である。しかし選手や監督のコメントからは「昇格」という言葉が幾度となく出てくる。

柳下監督は金沢で7年目を迎える。6年間で260試合を指揮し81勝103敗76引き分けで勝率約31%。

昇格の為に必要なのは1・2位になるか、6位以内に入り昇格プレーオフを戦う権利を得る事。

過去5年の6位のチームの勝ち点を平均すると67.2点。年間22勝以上しないと得られない。リーグ戦は42試合。勝率を31%から50%以上引き上げるには明らかに何か変化をもたらさないといけない。

J2での過去8年で開幕戦で勝利出来たのは2018年の一度だけ。ただ、去年までとは1勝の重みが違うのは明らかである。しかし東京ヴェルディとの開幕戦におけるツエーゲン金沢のサッカーを見ている限り、違いを感じる事は出来なかった。

昨シーズン、ヴェルディ相手に金沢はシーズンダブルを達成。ただ昨季終盤6連勝(そのうちクリーンシート5回)した城福さんに同じサッカーで挑んでも簡単には勝たせてもらえない。

スタメン

ツエーゲン金沢のスターティングメンバーは新勢力が5人。FWジェフェルソンさん、左SHの石原くん、右SHの奥田くん、右SB小島くん、左のCBに入ったルーキーの井上くん。

主力の流出を最小限に抑えたシーズンオフだったが、怪我人の影響などもあり大きく入れ替わった印象。ベンチにも入らなかったSB長峰くんやSH大石くんの状態も気になる。

ホームの東京ヴェルディは宮原・齋藤の2名の新戦力が入った。どちらも城福さんが好みそうなチームのレベルを底上げする事が出来る選手達である。

開幕戦は「所信表明」

どなたかが言っていたが、全くその通りだと思う。総理大臣のように演説する訳にはいかないが、どんなサッカーをやっていくのかを見る為の試合が開幕戦。その点ではヴェルディのサッカーはピッチ上で表現されていた。

ボールを最終ラインとアンカーで保持し数的優位を作り、金沢の網目を掻い潜って菱形を作りパスコースを生み出す。

もしくは逆サイドにフリーの選手を作りサイドチェンジしながら、相手を揺さぶってチャンスを作る。

速いトランジションで高い位置でボールを奪い返し、無理にボールを前進させずキープ。チャンスがあればペナルティエリア外からでもシュートを打つ。

攻撃時4-3-3から守備時は金沢に合わせて4-4-2でセット。ボランチへのパスコースを遮断し前線にロングボールを出させ回収。

もちろんもっと決め事はあるだろうが、パッと見で素人アウェーサポがわかるのはこんなところだ。ただ、その「所信表明」をする為にはキャンプで再現性を高める練習を行う必要がある。再現性が無いサッカーに連動性は生まれない。

連動性が全く無いとは言わないが、金沢には攻撃面での連動性があまり見られなかった。そのせいで「所信表明」をする事が出来なかった。

ある程度仕方のなかった部分はある。それは柳下監督の試合後コメントに表れている。

ヴェルディにボールを持たれましたけど、そう決定的なピンチは少なかったんじゃないかと思います。いつも言っていることは、自分がマークにいったら責任を持ってついていきなさいということと、相手が立ち上がりにどういう手でどこに来るのか(を見ようということ)。持たれる時間は多かったが、マークはしていたので……。

(jleague.jpより抜粋)

自分達のサッカーが【弱い・自信が無い・出来ていない】からこそ、相手の出方を見過ぎてペースを握られてしまう。

特に前半は決定的なピンチは無かったかも知れないが、チャンスはほぼなかった。金沢側からすると、前半はそれでOKだったのかもしれないがヴェルディ側から見ても想定の範囲内。

とにかく前半は0-0で終了。

前半スタッツ

38分まで金沢はシュートを打てず。マイボールになっても不用意に前に弾き返しすぐにボールを失ってしまう為、パス成功率も低い。

相手の様子を見てペースを握られても失点せずに前半をしのぐ。それは昨年までと何ら変わりのないツエーゲン金沢。昇格を口にするチームの「所信表明」とは到底思えなかった。

ボール支配率の高い低いでは勝負は決まらない.。カタールW杯で日本がドイツを破ったように、ボールを持っていなくても奪いにいくアクションを仕掛ける事によって主導権は握れる。そうポジティブに捉え後半に臨んでいる自分がいたのだが。

後半開始から動くヴェルディ

46分 東京V
バスケスOUT→阪野IN
杉本OUT→加藤蓮IN

阪野くんが1トップで加藤蓮くんが杉本くんのいた左サイド、河村くんがバスケスさんのいた右サイドにそれぞれポジショニング。金沢の守備が堅いと見るやサイド縦突破とクロスに活路を見出す作戦。

選手交代をされた事で再び「様子見」する時間が増えてしまった金沢。ようやく攻撃のカタチが見えたのは54分に左サイドで林→石原→ジェフェルソンとワンタッチで抜け出そうとしたシーン。

5つに区切った縦のレーンを横に段差をつけて「レイオフ」で前にボールを運ぶ。意識して練習していないと試合では出せない前進の仕方。ただシュートには至らず。

そしてお互いがカードを切った後の68分に、再三狙われていたサイドからのクロスで失点。

前半トップで使われながら、後半は右サイドから色んな角度とタイミングでクロスを供給していた河村くん。阪野くんがCB2枚を引き付け、金沢右SB小島くんの背後から抜け出した加藤蓮くんの技ありヘディング。相当練習した事が垣間見えるゴール。

続けて失点したかと思った河村くんのゴールはオフサイド。

失点後、ようやく攻める金沢

その後金沢は右サイドの奥田・小島を嶋田・櫻井に替え、石原→杉浦になって3トップ化してから嶋田くんが自由なポジショニングをして相手を撹乱。徐々に攻勢を強めていく。

しかし、失点し交代カードを切ってようやく火が付いた残り15分で結果をひっくり返すことは出来なかった。

試合結果 東京V1-0金沢

気になるデータ

上の図で平均的な位置取りを見ても、残り15分でようやく相手陣内にボールを運べていた事がわかる。加藤潤也くんがより後方に構えボランチ2枚でパスコースを確保、両SBを押し上げる事で相手陣内でプレーできるようになったと見て取れる。

ボランチとしての適性はあると見える潤也くんだが、果たして今後この位置で使われていくのだろうか。やはり前線での細かなパスや間受けが上手い印象があるだけに、負傷欠場中の力安くんやFC東京からのレンタル梶浦くんがいずれボランチとして入る事を期待したい。

xG(ゴール期待値)が分からない方はグーグルさんに聞いて欲しいが、この数値が低いという事はそれだけ決めにくいシュートを打っているという事。

この数値が毎度あまり高いとは言えない金沢。個の力に頼ってばかりでは無く、練習から攻撃をデザインし意図的に再現性を高めていかないとゴールに直結しない。

選手の力は高い。残りは41試合しかない。

ライブ配信でも再三述べているが、個々の選手の能力は高い。井上くんや櫻井くんもルーキーとは思えない堂々としたプレーだった。

この過去最高のメンツを指揮官がどう料理するのか。J2という「裏路地の人気店」で満足し同じ料理を出し続けるのか、J1の「表通りの行列店」に移転すべく新しい料理を出すのか。

残り41試合。よほどの料理が出来ないとプレーオフには出られない。

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今年も試合後振り返りを行っています。このレビューで触れていない事も「RED TAG」メンバーで語り合っていますので暇つぶしにどうぞ!


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