スペイン ラ・リーガ 第18節 エイバル VS グラナダ(21.Dec.19)
グラナダの新進気鋭の若手監督 VS メンティリバル監督
ラ・リーガはこの試合で今年は最終戦。19節は年明けとなり、短いウインターブレイクに入る。エイバルはホーム今年最後の試合に、昇格組のグラナダを迎えた。前節・ビルバオ戦ではスコアレスドローで敵地サン・マメスで、奇跡ともいえる勝ち点1をゲットし5連敗は免れたが、5試合戦って得点1という貧弱な攻撃を改善して、イプルーアに集まった観客を喜ばせられるのか。
ちなみにイプルーア(このレビューのサムネイルで使用している写真がイプルーアです)は収容人数7083人という小さいスタジアムである。それも、2014年にエイバルが初めてプリメーラに昇格した年に、ようやく席の増設計画が市の議会で承認され、15年に今の席数にまで増設された。昨年のセビージャ戦の最中に、PKを決めたバネガがアウェーまで駆けつけたサポーターの前に駆け寄り喜んでいる時に、最前列の柵が崩れて負傷者が出た事でちょっとしたニュースにもなった場所だ。なんだかすごく親近感が沸いてくるではないか。
両チーム共、水曜にはコパ・デル・レイ1回戦を勝ち上がり、ターンオーバーはしているものの、コンディションが気になるところ。「勝利でリラックスして休暇に入りたい」というホセ・ルイス・メンディリバル監督のコメントは本音だろう。
対する今年から3シーズンぶりにプリメーラに復帰したグラナダは、開幕から順調に勝ち星を重ね、9月にはホームでバルサを破るなど一時は首位に立つ躍進ぶりだったが、ここ5試合では1勝1分3敗と調子を落としてきている。昨シーズン途中から指揮をとり、クラブをプリメーラに押し上げたディエゴ・マルティネス監督は38歳と若くしてセビージャの下部組織やオサスナでキャリアを積んだ新進気鋭の実力派。2年前の記事を見つけとても面白かったので良ければご覧ください。
https://futbola.es/diegomartinez/
そんな若手監督と25年以上も指導歴を持つメンディリバル監督との戦術での勝負も見どころの一つ。下降気味の両クラブのどちらが良い結果で年を越せたのか。
過去の対戦成績は、sofascoreのデータが残っているぶんでは6試合でエイバルの4勝2分と、近年はお得意様としているグラナダだがプリメーラが久々なので参考にはならないだろう。
スタメン
エイバルの変更は1ヶ所。コレア→ホセ・アンヘル。怪我で離脱していたアンヘルが戦線に戻ってきた。前節左サイドバックをしていたテヘロが本職の右SBに戻った。乾のライバル、オレジャーナが出場停止の為、乾が3戦連続スタメン。
グラナダも1ヶ所の変更。エレーラ→ゴナロン。不気味なのは元スペイン代表のソルダード。フェネルバフチェから夏にスペインに戻ってきた。今季は2ゴール2アシストに止まっているが、こんな経験豊富な力強い味方はいないだろう。他にも元フランス代表でローマからレンタルで加入しているゴナロンや各年代のアンダー代表経験を持つポルトガル人、ドゥアルチなど、侮れない相手である。試合の放送でもSofascoreでも4-2-3-1となっていたが4-4-2にも見える微妙なポジショニングだった。サブのメンバーはこちら。多分写真が無いのはBチームから上がってきた選手。パパ・ディオプが怪我明けでベンチ入り。
前半 激しくプレッシャーをかけるエイバル
エイバルが最初から飛ばす。何故かエイバルのエスカランテのところが空く事が多い。本来そこにはグラナダのゴナロンがいなければいけないはずなのだが、一列下がって5バック気味になる事が多かった。開始5分でそのエスカランテがグラウンダーでミドルを放ち、ゴール前にいた乾にボール当たって、あわやゴールかと思われたが少し右に外れてゴールならず。
グラナダは4-4でセットし、マンマーク気味に入ってきた選手についていく。もう少しラインを押し上げて守れば良かったと思うのだが、リトリート気味に守備。乾が動いた空間にK・ガルシアが入り込んだり、ペドロ・レオンが外へ移動したところにエスカランテが入ったりと、エイバルが積極的に空間を利用しゴールに迫っていく。グラナダはボールを奪ってもなかなか繋ぐ事が出来ず、エイバルの即時奪回のプレスにすぐにボールをロストする。
ようやくソルダードが右深くに抜けだしグラウンダークロスでC・フェルナンデスに合わせるが、惜しくも左に逸れてゴールならず。
エイバルの攻撃の組み立てと、敵ボランチの謎
エイバルの攻撃はやはり前節と同様にFWのK・ガルシアやセルジ・エンリクにロングボールを出し、セカンドボールを回収してPA脇からクロスを狙うような感じ。そして前節と異なるのは、旋回するように味方が空けた空間を利用してパスを受けていたところだ。2ボランチの脇のスペースを利用しようとしていたと思われる。
そして18分ごろにはゴナロンが下がって空いている場所を使ってエスカランテが前進しスルーパス。
タイミングが少し合わず得点にはならなかったが、ただ立っているだけのような元フランス代表ゴナロン。いったい何がしたかったのだろう。
久々の複数得点
そしてグラナダは、それが改善されないまま先制点を奪われてしまう。
アンヘルからペドロ・レオンへの鋭いサイドチェンジのパス、それをヘディングでエスカランテに落とす。このエスカランテにつくはずのゴナロンがやはり後ろにいたので、グラナダCBマルティネスが前進しようとした矢先にセルジ・エンリクへのアーリークロスが上がり、セルジがスライディングでダイレクトにボールをゴールに叩きこんだ。マジで何したかったんだよ、ゴナロン。
セルジ・エンリクはようやく今季初ゴール。
決して「おい、俺の大事な指輪、飲むんじゃねえ!出せ!」とか言われているのではなく祝福されています(笑)
クロスへの寄せも甘い前半のグラナダ。
そして2点目の原因の一旦もゴナロンが。K・ガルシアとの競り合いで顔に手を当ててしまいファールをとられ、グラナダゴール30メートル付近からエイバルのフリーキック。
ペドロ・レオンが直接狙おうとしたボールはグラナダの壁に当たってしまうが、エイバル10番エドゥが壁の隙間を縫ってフリーのK・ガルシアへパス。ゴール左隅に2点目を叩き込んだ。
うーん、なんで誰もK・ガルシアを見てないんだろう・・・。
久々の複数得点のエイバルだったが、その後すぐにK・ガルシアがグラナダGKルイ・シルバと交錯した際に、左のハムストリングを伸ばしてしまいシャルレスと交代する羽目に。
やっとホセ・アンヘルが戻ったかと思えばまた負傷者・・・。あまり重傷でなければよいが。
その後も、乾が2人を抜き去るドリブルを披露しスタジアムを沸かせるなど、エイバルのペースは続いていく。(下のリンクに動画あり。)
PAの両脇を狙ってバディージョやプエルタスが動いてはいるが、エイバルの2ボランチが上手くパスの芽を摘んでいた。前半では先に触れたソルダードのクロス以外、チャンスと呼べるシーンは見られなかった。エイバルのハードワークに押されている感じのグラナダ。
前半終了 白井神の凄さを痛感
前半が終わった時点でエイバルが14本シュートを放ったのに対してグラナダは3本。パスの成功率も70%と58%でエイバルが優勢。ゲームを見たとおりの数値。ロングボールをC・フェルナンデスを狙っているがあまりエアバトルで勝利出来ていない。フィジカルが強そうには見えないC・フェルナンデス。(下の写真の選手)
実際グラナダGKルイ・シルバのパスの精度も良くなかった。それを考えると我が軍(金沢)の白井くんの方が成功率は高い。さすが神だ。来年も頼むぞ。
後半 開始から変わらずエイバルのペース。グラナダの作戦変更
雨が激しくなり、前半よりスリッピーなグラウンドコンディションになった後半。乾が股抜きで再び個人技を見せれば、エスカランテも合計4人と対しながらもボールを失わない激しいデュエルを演じるなど、前半とペースは変わらずエイバルに。2点を追うグラナダは後半開始10分でバディージョとネヴァを諦め、FWのマチスとラモスを投入した。
グラナダは4ー2-3-1から3-4-3に移行。後で調べると普段はバディージョとプエルタスは逆のサイドでプレーしている様子。しかし、あまり逆にした効果を感じなかった。交代により本来の位置に戻ったプエルタス。
エイバルとツエーゲンの違い
ここで少し金沢ならどういう守備をするか考えてみたい。ただエイバルの分析をするだけではなく、金沢の分析に役立てたい為に始めたからだ。
3バックの際に金沢の動きを再現するとこんな感じになる。
金沢の守りのウィークポイントは、ボールをサイドで奪回出来ればいいのだが、サイド深くまでボールを運ばれると全体が押し込まれ、ボールを奪ってもなかなか効果的にカウンターに持って行けなくなる事と、人に付いていく為に、意図的にPA正面を空けられて上がってきた敵の中盤の選手などにシュートを打たれてしまう事だ。その点、エイバルの守備は最初から全体的に押し上げ、敵のビルドアップに対する前進を簡単にはさせないようにしている。
エイバルはゾーンで守ってはいるが攻撃的なプレスを発動し、金沢と同じくらい運動量を求められる。前線からハードワークでボール奪回を仕掛けていく。そしてボールが後ろに行くと
4枚でブロックを組んで3トップに対応していた。前節もオリベイラのライン統率とコーチングが見事だったが、今節も光っていた。エドゥとエスカランテの幅の広い守備にも助けられ、徐々に押し込んで来るグラナダではあったが、決定的なチャンスを与えないエイバル。
前線からディフェンスラインをコンパクトネスに保ち、4-4ブロックを組みゴール前も簡単には開けさせない。得点力がつけばもっと上に行けるはずなのに。やっぱり我が軍に似ている(笑)
グラナダ、高さを生かし攻勢に
グラナダはプエルタスやマチスが、かなり前まで出て5トップのように見える時もあるほど。前半はゼロだったコーナーキックも後半では5本になっていた。
後半から185cmのC・フェルナンデスより186cmのラモス(下の写真)目掛けてボールを放り込んでいた。確かに強そう。
プエルタスやエテキがセカンドボールを回収。高さを生かしクロスを上げて得点を狙うが、187cmのエイバルCBオリベイラが跳ね返す。見応えのある空中戦が繰り広げられたが、なんとかコーナーキックに持ち込む。
グラナダは192cm、189cmのCBコンビを狙ってのコーナーキックからの得点も得意としているパターンだったが、エイバルもFWシャルレス以外は全員で守りゴールに鍵をかけた。
最後の賭け、失敗
グラナダは残り15分、最後の望みとしてレフティのA・マルティネスを投入。マチスを右サイドに移動させる。エイバルも腰を痛そうにしていたセルジをキケ・ゴンザレスに替えた。
右に移動したマチスが得意のドリブルでゴールに切れ込む。ソルダードが幅をとる動きでマチスの進入を促す。PAギリギリのところでファールして止めるしかないエイバル。A・マルティネスの直接狙ったFKはバーに当たってなんとか難を逃れる。
そんな最後のグラナダの猛攻に終止符を打ったのは乾だった。
トドメを指す乾のゴール
シャルレスが胸で落として、K・ゴンザレスへ
入ったばかりのK・ゴンザレスがドリブルでゴール前まで持ち込む。前がかりになっていたグラナダ。逆サイドから走り込んでいた乾には、誰もつく事が出来なかった。
角度の無いところからサイドネットを揺らす見事なゴール。貴重な追加点でグラナダの息の根を止めた。
乾はエイバル復帰後、初ゴール。出場停止のオレジャーナとポジション争いをしている現状で、決めたこのゴールは誰よりも乾自身が待っていただろう。
3試合ホームで勝てていなかったエイバル。しかもリーグ戦5試合で1点しか取れていなかった攻撃陣が3得点。お祭り騒ぎのイプルーア。
最後になんとか一矢報いる為に、奮起を促すディエゴ・マルティネス監督だったが、このまま3-0でゲームセット。
試合終了とスタッツ
前半はエイバル、後半はグラナダのペースだった事がスタッツを見てもわかる。チャンスで決められたかどうかだった。ロングボールに頼る事が多かったグラナダに対してエイバルは、サイドチェンジからのクロス、セットプレーからの得点、カウンターと多彩だった。
2トップだろうが3トップだろうがグラナダは、あのボランチではこの先が思いやられる。良くバルサを破ったものだ。(バルサ戦のメンバーを見たら違うボランチだったので納得)
「エドゥとエスカランテ」「藤村くんと大橋くん」(金沢のボランチコンビ)タイプは違うがバランスが取れているというところが似ている。パパ・ディオプがどんなタイプかも見てみたい。年明けのバレンシア戦めっちゃ楽しみです。