他人のすごさから自分にもできることを学び実践する
1.医師、中村哲先生のDVDを見ました
先日、パキスタンやアフガニスタンの医療活動に従事された医師の中村哲先生のDVDを見ました。
当初は現地で病気に苦しむ患者さんを診療するところから始めていましたが、
次第に次々と患者が生まれる原因が近隣地域一帯の大干ばつにあるということに気づき、
この干ばつを大至急解決しない限り、大勢の人が病に倒れることになるという構造を中村先生は見抜きました。
そこで近くを流れる大河から水を引き込む用水路を、現地の人達の協力を仰ぎながら造設するというアイデアを思いつきました。
ところが中村先生は医師で建築の専門家でも何でもありません。現地の人にそういった技術に長けた人がいるわけでもありません。
しかもお金がなく使えるものは石や土などその辺に転がっているものばかり。
それでも急いでやるしかないという気持ちで中村先生は白衣を脱ぎ、全くの専門外である用水路建設に対してリーダーシップをとって動き出します。
そこからも苦難の連続で、大河から水を用水路に引き込むための堰が、大河の水流の勢いに負けて流されてしまったり、
何とかして作った用水路も途中で決壊してしまったり、地形の特性上、建築技術が要求される埋め立て工事を何とか現地で行ったり、
試行錯誤の末に2年かけて、用水路を無事に完成させ、干ばつで草一つ育たなかった土地に緑をよみがえらせたというストーリーでした。
2.中村哲先生の偉業から学ぶことがありました
中村先生の成し遂げたことはとてつもなく偉大なことであるように感じます。
実際に何十万、何百万という人の命を救ったでしょうし、医者冥利につきる偉業だったと思います。
だけれど私が同じようなことをしようという気にはなかなかなれません。
実際には危険度の高い選択肢だったと思います。完成したからこそ偉業としてたたえられますが、
もしも失敗していたら、単なる愚かな行為、医師は医師の仕事だけをしていればよかったのに、などと蔑まれていたかもしれません。
そう考えると偉業と愚考は紙一重だとも感じますし、
私にはそのような偉業を成し遂げられるような挑戦は荷が重すぎますし、私の役目はそこではないようにも思うのです。
ただ、中村哲先生の成し遂げた偉業から、私の人生にも役に立つであろうエッセンスを抽出することは可能です。
一つは、「専門分野の解決策は専門分野の中にあるとは限らない」ということ、
もう一つは、「専門外の分野を学ぶ時に先人の知恵を活用する」ということです。
中村先生にとって建築は完全なる専門外です。
しかしその領域に活路を見出した以上は、専門外でも挑戦するしかないわけですが、
それを本当にゼロから始めるとなれば、大きく失敗する可能性も高く無謀な行為となってしまいます。
おそらく過去の先人も建築にいて様々な失敗をしてきたことでしょう。
その失敗を繰り返す中で解決策を地道に積み重ね、後世へその価値を引き継いできたはずです。
中村先生も堰の倒壊や、用水路の決壊を解決するのに日本古来の治水技術を活用したという説明のくだりがありました。
先人が苦心の末に編み出した解決法を後世の人間が使わせて頂くことで、困難を乗り越える可能性が高まっていくと。
それが中村哲先生の活動を愚考ではなく、偉業へと押し上げた秘訣だったのではないかと私は感じました。
3.そして自分の人生にも活かしてみます
さて、以上の教訓を私の医師人生にも当てはめてみましょう。
私が感じている課題は、「患者が病気の原因を自分の外に求め、医療に依存して真の原因を顧みない」という現代医療の構造です。
これは医療の中で解決しようとしてもどうしようもない課題かもしれません。
すでにそのようなやり方は患者にも医療者側にも文化として強固に定着しきっています。
だとすれば、医療の場以外でこの課題を解決する手段がないだろうかと考えてみます。
文化として定着して変えられないのであれば、新しい文化を一から作り直していくというのはどうでしょうか。
その意味で私が今注目しているのはこども達への教育です。
教育について私は全くの門外漢ですが、先人の知恵を活用しつつ、病気に対する考え方を教える場を作るのは面白いかもしれないと思っています。
ただし、単に病気の考え方と予防の仕方を教えるというだけではこども達は退屈してしまいます。
何か遊びや心底楽しめる行為を織り交ぜてこの活動を進めていく必要もありそうです。
その意味で私が今注目しているのは農業です。農業で身体を動かしながら、人間も自然の一部で病気とは何かについて学んでいくのです。
このような発想で活動する医師、いかがでしょうか。
愚考ではなく、偉業にできるように中村哲先生の生き方をおおいに参考にさせて頂きたいと思います。
皆様の人生にも何かの参考になれば嬉しいです。
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