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秋には萩尾望都作品を
残酷な神に支配されて、自分の世界を壊され続ける。
しかし、その神もまた残酷な神に支配されて、世界を壊された過去があるとしたら。
終わらない愛と執着の繰り返しを止める方法は、その手を離すこと。
*以下ネタバレあり。
Instagramにも掲載しています。
あらすじ
ボストンに住む15歳の少年ジェルミは、母のサンドラがイギリス人のグレッグと再婚したことをきっかけに、イギリスに移住。
義父となったグレッグから性虐待を受けるようになる。
精神的に弱い母に訴えることなどできない。唯一相談できた精神科医も病気で亡くなってしまう。
家の誰にも気づかれず、または見過ごされて3ヶ月が過ぎたクリスマス。ついに彼はグレッグの殺害を決意する。
殺害方法は、グレッグが仕事に向かうため乗る自動車に細工をして事故に見せかけること。
しかし予定外のことが起きた。その車には母のサンドラが一緒に乗っていたのだ。
ジェルミの思惑通り、自動車の事故でグレッグは死亡。そしてサンドラも車から脱出できず燃え死んでしまった。
義父から解放されたが最愛の母を失い、霧のような空虚感に襲われるジェルミ。
そんなある日、母の部屋から日記を見つける。
そこには母が生前グレッグとジェルミの関係を知っていたことが記されていた。
殺人の代償
彼が唯一相談できた精神科医は、ジェルミが殺人を計画していることを知り「後悔しないのか」と何度も聞きます。
実行前の彼は何の迷いもなく「後悔しない!」と言いますが、実際はどうなったか。
後悔はしなかったが、より深い沼に落ちてしまったような気がします。
なぜグレッグはジェルミをそんなふうに暴力的に愛したのか。
なぜ母は、それを知っていて何もしなかったのか。
死んでしまったが故にもう聞けない本当の思いを知ることもできないまま、ジェルミは夢の中で何度もグレッグに犯され、母は燃え続ける。
主人公の少年ジェルミが苦しんだ9月から11月。そして12月の事件。
それ以降の年に一度、12月に起きるフラッシュバックを彼は「遭難」と呼ぶのですが、もし殺人という方法を取らなかったら違う未来があったのではないかと考えさせられます。
秋になると思い出す漫画
10年ぶりに読んだ『残酷な神が支配する』
最初に読んだ時はジェルミの境遇が辛すぎて、義理の父で彼を性暴力で心身ともに痛めつけるグレッグが理解できませんでした。
あれから10年生きてみて、少し理解できた気がします。共感はしないが。
自殺手前まで追い込まれたジェルミが1年かけて少しずつ事件と向き合って解放されていく過程は圧巻です。
今でこそ全10巻を一気読みできますが、これを9年間連載してた当時に読んでた人はどんな気持ちで次の話を待っていたのか。萩尾先生の構成力に震えます。
この季節にぜひ読んで彼らとともに「遭難」してほしい漫画です。
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