『両利きの経営』
経営は二兎追う戦略をとるべきと説く。
二兎とは、既存事業の深掘りである「深化」と、既存事業から幅広く周囲を概観してビジネスチャンスを見つける「探索」の双方を追うべきということだ。
クリステンセン教授の「イノベーションのジレンマ」を持ち出すまでもなく、成功企業は「サクセストラップ」に陥り、既存事業を阻害する(と思われるような)新たな挑戦は、今まさに成功しているがゆえにしづらい風潮が生まれる。
しかし、成功しているタイミングで次の成長の柱を見つけてゆかないと、継続的な成長を実現することは難しくなってしまう。
まさしくおっしゃる通りだが、実践するのはなかなか難しい。
経営戦略論という学問は、基本的には今現在までの成功企業の成功要因の探求と、今現在までに失敗してしまった企業の失敗要因の探求によって成立している。
GAFAやBATHといえども、今は類まれなる成功企業としてもてはやされてはいるものの、もしかしたら来年、その成功は陳腐化し、来年末刊行される経営戦略の書籍には、「負け犬」企業としてその失敗要因が語られてしまうかもしれない。
将来の不確実性の中で信念をもって戦いを挑むから経営は面白い。
それには確かに、過去の成功体験や失敗体験を疑似体験することは必要だ。
特に、失敗体験を疑似体験することで、同じ轍を踏まないようにすることは肝要だと思う。
ただ、必要以上に学問的に形式ばってしまっては、おそらくこの不確実性の高い世の中で一時的にも勝利することは難しいと思われる。
本書では、最終的な企業の勝敗を分けるカギは、その企業のリーダーシップの有無によるとも語っている。
成功企業にはスター経営者がおり、トップダウンで経営方針が断行されることもある一方で、分権化を推進し、ボトムアップの経営を行うことで成功する企業もある。
ただ、トップダウンにせよ、ボトムアップにせよ、いずれも協力なトップマネジメントのリーダーシップが必要だ。
本書は、数多くの企業の実例を踏まえ、まさに「両利きの経営」を行うことの必要性を端的かつ、わかりやすく説いた極めて良書だと思われる。
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