『妄執』
もはや あなたへの 純情というものは 狂気である
あなたを想う あまりに 自律神経が ぶち壊れ
私の酸素飽和度は 日頃 90から98の 乱高下を繰り返している
ちょっとしたことで 脈拍が100を超え 体中熱くなってどっと汗をかく
あなたの視界を占める テレビの画面や スマートフォンの画面にまで
嫉妬する始末である
あなたの心を動かすもの
万年筆 1本にさえ
成り代わりたくて胸中が 穏やかではない
あなたの顔ばかり見て その目線を追い
あなたの顔を 穏やかにしない 全てが 憎たらしい
かくいう私は 恐ろしいほどの口下手で 不器用で
手紙ですら 私自身の純情を 伝えきれずもて余し
日々 心を使い切って 心が焦げて
目尻から 不甲斐ない涙ばかりが だらだら流れてくる
例えば「 愛しています」
例えば「 好きです」
こんなものよりも もっと適切な 言葉があるとしたら
それは
「 妄執」 もしくは「 狂気」
純情というものが 熱を帯すぎて
己の頭髪 1本まで 爪の先まで こんなにパンパンに満たして狂おしいのなら
あなたの 存在の全てをくまなく 奪いたいと思うのなら
もはや 私の中にあるものは 純情とは言わない
あなたはいつか
「 私があなたに感じているものは 妄執だ。醜い と思わんか」
そういったけれど
今まさに 私があなたに思うものは
感じているものは
「 妄執」 もしくは「 狂気」 である
私は私の純情 が 祈る あまり 1本の立ち枯れた 糸杉のように 天に刺さることを 望んだ
ご覧の通り 今の私は あなたが欲しくて 見失うほど 目くらだ
あなたとの 日々というものを舌っ足らずな 幼い 甘えに包んで
伝えきれない 伝わらない 伝え方のわからない あなたへの欲望ばかり
ただあなたを飲み込んでしまいたいと
むさぼり食ってしまいたいと
幼く 見えるように 閉じた口を開ければ
私の口蓋は 喉の奥から 胃袋や腸まで 無限に広く 真っ赤で
火山の火口のように
マグマで ふつふつと 煮えたぎっていて
あなたが落ちてくるのを待っている
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