見出し画像

『体ごとぶん投げてやる。』

箱の中には

千も万もの 言えない言葉があって

それはどうやら

私は生きているうちには

あなたが生きているうちには

こそばゆくて

どうしても照れてしまって

私の口から 紡ぐことは

どうやら 無理なのだ

入れ歯をしていない 顔で笑ったり

あなたの前でブーブーおならをしたり

パジャマで寝転がって

照れ隠しに テレビの画面を見たり

転がったままタバコを吸っては コーヒーを飲み

ひとりで勝手に 体温が上がってしまい

椅子に座って 窓を開けて

いちにちに何度も 汗をかくほど のぼせて

箱の中に 詰め込んである言葉を

どうしても言えないのだ

かっこつかなくて

私はダサくて

あなたに初めて言った

最初の「 好きです」

あれはもう精一杯で

泣きたいぐらい 私は

愛だの恋だのが下手くそなのだ

恐ろしいぐらい 口下手で

じれったい ぐらい 不器用で

だからこの言葉の箱は

寝ているあなたの 髪の毛の 匂いを嗅いだり

眠っている その手を こっそり 握ること

そして外を歩きながら メガネを外し

人目も憚らず ポロポロ泣くこと

そんなことでしか

箱の中身を解消できない

箱の中にあるものは おそらく 言葉ではないんだろう

もっともっと 込み上げてくるものだ

だから 大人びたように

「 愛しています」

だの

「 好きです」

だのと

背伸びをしなくたって

あなたに

体ごと ぶん投げてやる

ここから先は

0字

¥ 1,000

よろしければ、サポートお願いいたします!!頂いたサポートは夫やわたしの医療費や生活費に使わせて頂きます。