『この極々平凡な』

「平凡」 この 尊く 美しいもの

毎日が恙無く 繰り返されることの ありがたさ

あなたがいて

私がいて

世間の人は これを マンネリなどと 言うかもしれないけれど

朝 何事もなく 起きて

言葉は少なくとも ゆったりした時間が流れ

夜、 布団の中で じゃれて

頭をくっつけて眠る この上ない幸せ

この時間が

たとえ少々の意思の疎通の不具合や

たとえ少々の ほんの小さな喧嘩があったとしても

私の恋心が 先走って あなたに 不快な思いをさせることがあったとしても

次の瞬間には すぐ収まって

またゆっくりと時間の流れ出す

かけがえのない「平凡」

何事も起こらず

ひたすら 淡々と

ささやかな 微笑みに包まれて

あなたの気分が総じて 快いと

今日も良い日だなと つくづく思うのである

私は 女学生みたいに いつも タロットカードで あなたとの 恋占い ばかり

一喜一憂しては あなたに叱られる

私をこんなに 幼くしたのは あなたである

コンビニのカップに入ったコーヒーを

あなたへの ささやかなプレゼントにする

私はいつも 昼間 長座布団に寝転んで

あなたの顔ばかり 毛布の隙間から見ている

言葉が出ないのだ

今日はあなたと音楽を聞いた

ニ人で昔よく聞いていた 昭和歌謡 ばかりである

あなたの 心のさざなみが 懐かしいメロディーと 懐かしい歌詞になって ずっと流れていた

あなたも 私も 終始無言で

今日という日の「平凡」 の中の ちいさな想いを

まんじりともせず 長いこと聞いていた

「平凡」 という 尊い日の中で

明日も「平凡」 であれと願う

私の心臓の高鳴りは

このごくごく「平凡」な

あなたにしたら つまらないかもしれない日常の中で

四六時中止むことがなく

明日も明後日も明後日も そのずっと先も

「平凡」 であれと願う

ただ恙無く恙無く

何事もない この日々が 時を止めず

いつかプツリと 止まる日まで

あなたがそこにいて

私はここにいたいのだ