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どでかい風呂敷
入れ歯をとると、正面から見えるのは、上の左端の一本の歯しかなくて、私の顔は、六十歳ぐらいのおばあさんみたいに見える。
家の中で私は、入れ歯の違和感に、しょっちゅう入れ歯を外したり入れたり、そればっかりやっている。
例えば、「女」であるとか「女性というもの」であるとか、もうそういったところから 、私の顔は埒外だ。
おおよそ、性であるとか、例えば 恋愛だとか、もうそんなところからはかけ離れている。
その私に対して、お父さんは、時に真剣に、涙を浮かべてくれることがある。
「男」としてだ。
私を、「女」として、お父さんは、愛してくれている。
歩道橋の事故の時もそうだったけど、お父さんの、私という生き物をまるっとひっくるめて、どんなことがあっても「女性」として扱ってくれている、もうそのことには、感謝と脱帽しかないのだ。
もちろん私たちの間には、「性的なもの」は、お互いにとっくにない。
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