日本人製作家 ヴィオラ展 声のような個性:弦楽器の音
「日本人製作家 ヴィオラ展」に行ってきました。
「私の代わりに、今日行ける?」
ヴァイオリニストの友達からのお誘い。
なんだかよくわからないけど、村上淳一郎さんの演奏だ!大ファンです。行きませう!!と喜びの代打参加です。
早めに会場に着いてみたらば、39台のヴィオラと13台のヴァイオリンがぞろりと並んでいた。
全部同じに見えるけど、一台ずつ楽器の前に、名前を書いたカードが添えてある。この楽器を弾いていた有名演奏者の名前かな。
「あの、ほんとに何も知らない状態で来たのですが、教えて頂いても良いですか」
名札を下げた人に色々と教えてもらった。
この会場は「作品」展。よって、楽器の前の名前は製作者。正しくは製作家、と言うらしい。
アマチュアで弦楽器を作る人もいるけど、今回の出品はプロに限る。プロとアマの線引きは、工房に所属している、または自分の工房を持っているかどうか。
弦楽器を作っている製作家さんって、こんなにいるんだ!
これでも日本全国の1/3か1/4らしい。
楽器作って、食べていけるの!!!???
「製作だけじゃなく、修理とか、調整とか、色々あります」
どういう経緯(世界観、技術の習得)で製作家になっていくの?
ヴァイオリンを作る人はチェロなんかも作っちゃうの?
価格はどうやってつけるの?
ニスは独自で調合したりするの??
聞けば聞くほど、凄い技術職。造形とデザインと音響が何層にも重なった、緻密な技術だ。
「全て手に取って弾いて頂けます」
(ああ、弾けない)
全部弾いてみたい。なのに、音さえ出せない。
というか、持ったことも無い。悲しい。
弾けたら、楽しいだろうな。
演奏は村上さん率いる村上カルテット。
4人はこの会場から選んだヴィオラで演奏した後、その製作家さんから説明を聞き、さらに最後に村上さんが1台ずつ弾いてみせて、製作家さんの解説を交えながらその音の違いを味わうという、大変贅沢な企画でした。
同じヴィオラなのに、一台一台の音が全然違う。
びっくり。
こんなに音が違っているのが普通なの??
それとも今回の製作家さんが、強い個性(クセ)の粒揃いなの??
しばらく混乱していたけど、人の声も同じだなと我に返った。
同じソプラノでも皆声が違う。違うソプラノが5人集まって歌っても、綺麗だものね。
朗々として、さあっと広がる揮発性の高い音を持つもの。
加齢の脂がのりつつ、少ししゃがれた声のような音を出すもの。
鐘の音がよじれたような粘りのある音を出すもの。
夜遅く、ベッドの中で無限に広がる考え事をしているような音を出すもの。
作りたての楽器なのに、経年した音がでてしまう製作家さんがいて、その方の作る楽器はいつもなぜか経年味を帯びてしまう。
それが楽器に宿る「製作家さんの本質」だそうだ。
面白かった。同じ瞬間を生きていてもそれぞれ記憶が違うように、同じ花を見て、同じ画材を渡しても描かれる絵が違うように。その人となりが、楽器の音色にも、出ちゃうんだ。
あまりに真剣に取り組むあまり、いつまでたっても完成に納得できず、いじりすぎて、いじりすぎて
「もうこれに取り組みすぎて、僕の時給がコンビニのバイトより安くなってしまう!!」
と言った製作家さんもいた。
一人一人がそれぞれの沼を持ち、生きながら既に作品のようでした。
私の全く知らない領域、演奏家と音の世界。
本当に行って良かった。
知らない世界が多すぎる。
色々な人の話を聞いていきたい。
ではでは、またね。
ご予約はこちらからどうぞ。
https://reserva.be/iki1114
ではでは、サロンでお会いしましょうー!
https://www.iki-aoyama.com/