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蚊敏感くん蚊鈍感さん。(1003文字)
夫は蚊がきらい。
姿や気配を見つけると、仕留めるまで決してあきらめない。
起きているときはもちろん、たとえ寝ているときでも気配を察知。
どれだけ眠くても素早く身を起こし、寝室の照明を全灯して寝ている私たちを起こす。
蚊の全ての出口を封鎖し、場所をつきとめて仕留める。
物凄い執念をもって蚊に挑む。
そのときの目をのぞきこんだことはないけれど、血眼になっていそうで怖い。
寝ているときでも蚊を察知することができる夫でも、さすがに不在のときはわからない。
夫がいないときは報告メールか置手紙をする。
「今日います」
これが蚊が活動をする春、夏、秋の日常。
小さな存在を察知すると誰彼ともなく目を凝らす。
あまり好きじゃないノーマット的殺虫剤や、蚊取り線香も彼と暮らすようになってからは使っている。
独身のころ、私は蚊に対して、全く恐怖心がなかった。
嚙まれたら、
掻けばいいや~。
噛まれた所はなんかぬっとこ~。
寝ているとき不快な羽音がしても、
耳栓すればいいや~。
ふとんかぶればいいや~。
ザ・蚊鈍感。
最初は夫に狂気を感じたり、イラついたり、不憫に思っていた私だったけれど、いつのまにか蚊敏感になっていた。
一緒にいる人からうける影響は計り知れない。
人を蚊敏感にするだけしておいて、退治してくれる彼はいない。
「く~っぅ 逃した!どこいったんやろ~」
動体視力が弱いのか、わたしが蚊をたたくときの命中率は低い。
必死で集中しても捕まらない。
なんてったって元蚊鈍感。年季の入った蚊敏感とはその歴が違う。
「もう、けいちゃ~ん蚊いるよ~!」
海の向こうの夫につたえたところで夫は笑うばかり。
「お母さんも蚊が嫌いになったね~」
「え、タクトは違うの?」
「ぼくは普通。きらい!って思わずに【いるけど、気にしない】って思えばいいよ。ぼくはそうしてる。小学校のクラスにいる苦手な子と一緒。気にしなければいいんだよ」
一緒にいる人からうける影響は計り知れない。
今年の夏は息子の影響を沢山うけて、蚊鈍感にもどることができるかもしれない。
そしていずれ夫と暮らすようになったら、蚊敏感にもどるかもしれない。
それはそれでいい。
蚊の発生がすくないときく、海辺の町で暮らすのも良い。
中国にいたころ、蚊をたたこうとすると中国人の友人がいった。
「コロサナイデ。かわいそう」
豚も、牛も、鶏も、ウサギでさえも美味しく食べる彼女の言葉だったので驚いた。
きっと無駄な殺生はしたくない主義なのだろう。
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