~随筆~ 明治の女・二人
まずマセおばさんのことから書こう。マセは明治のごく初期生まれの女性としてはかなり珍しい一生をたどった人であると思われる。そのマセに私が興味を持ったのは老齢になってからで、マセについてよく知っていたであろう祖母や伯母たちも亡くなり、私が知る向上心の強い勇敢なマセについての知識はわずかでしかなかった。わが一族の傑出したこの女性のことを書き記して後の者にも知らせてやりたいという思いを諦めかけていた頃、思いがけず偶然に、マセの結婚相手であった加藤の係累の家からマセの簡単な自筆、墨書