ベンチャーキャピタリスト兼NBA選手!? アンドレ・イグダーラの正体とは?
皆さん、アンドレ・イグダーラという選手を知っているだろうか?
NBAファンであれば誰もが知っていると思うが、もともと76ersでアレン・アイバーソンと強力なデュオを組んでプレーしていた元オールスター選手で、2015年のNBAファイナルでは執拗なディフェンスでレブロン・ジェームズを苦しめ、チームメートのスーパースター、カリーを退けてMVPを獲得。それ以降、ゴールデンステート・ウォリアーズを「常勝軍団」へと変貌を遂げるきっかけを作った、今やウォリアーズには欠かせないベテラン選手である。
しかし、そんな彼のLinkedinプロフィールの肩書きが何かを知っている人はNBAファンでも少ないのではないだろうか?
「Entrepreneur, Venture Capitalist, NBA Athlete」
彼のプロフィールに「NBA選手」という肩書きは最初に来ない。
NBA選手はあくまで彼の人生の中の一部分であり、彼が営む数多くのビジネスの一つに過ぎない。それよりも、イグダーラは自分のことをアントレプレナーでベンチャーキャピタリストと呼ばれることを好む。そう、このアンドレ・イグダーラこそが、現在のNBA界に「スタートアップテック」への投資ブームに火を付けた男なのである。
そもそもイグダーラはいわゆる普通のNBA選手と変わらない、NBA選手ではごく「普通」の感覚を持った選手だった。アリゾナ大学を2年で中退し、2004年にアーリーエントリーでNBAの世界へ。一流選手になり大金を掴むために練習に明け暮れ、3年目終了後(2008年)のオフに念願の6年8000万ドルという大型契約を勝ち取る。その後は76ersのエースへと成長しオールスターにも出場、NBA選手としては十分な選手生活を送っていた。
そんな彼にビジネスの世界へ引き込むきっかけを作ったのは、多くのアスリートを顧客としてもつ起業家であり投資家、ルディ・クライントーマスという男だ。
ルディ・クライントーマスとイグダーラは今から10年前にルディ・クライントーマスの顧客がイグダーラのチームメイトだったところから知り合いになり、その後ファッションやビジネス感覚、スポーツなど多くの価値観をお互いが共有できることで意気投合し、イグダーラがアドバイザーとしてルディ・クライントーマスを雇ったところからイグダーラのアントレプレナーマインドが磨かれて行く。
イグダーラはルディ・クライントーマスの話によく耳を傾けた。76ersとの大型契約直後に超高級車や豪邸を買うことをやめ、代わりに今後の米国住宅市場がどう変化してくのか、シリコンバレーのテクノロジービジネスがいかにブームアップしてくのか、VCの世界はどうなっているのか。手にした大金を浪費することより投資することに興味をそそられたのである。
何より、2013年にナゲッツからFAとなったイグダーラは、他チームのより高額なオファーを蹴ってウォリアーズと4年4800万ドルという格安で契約したのは、シリコンバレーのテック・VC業界にアクセスできるという理由からだった。彼はその年から本格的にスタートアップテック企業に投資を始め、現在ではフィンテックやファッション、ヘルスケア、メディア関連など、25社以上ものスタートアップに、ビジネスパートナーであるルディ・クライントーマスと共に投資をしている。投資先は、オンラインマットレスで有名な「Casper」や、D・ジーターが創業した選手のためのオンラインメディア「Players’ Tribune(KDやステフォンカリーも出資している)」、新しい経済オンラインニュースメディアの「Cheddar(ここではイグダーラ自身が経済界の重鎮やアスリートにインタビューをするなど制作にも関わっている)」などがある。
さらに、イグダーラは後進育成にも熱心で、昨年8月には現役のNBA選手を中心に、他競技のアスリートや女性アスリートを多く集めて、ステフォンカリーと共に「テクノロジーサミット」をサンフランシスコで2日間に渡って開催したのだ。
今やNBA・米国プロスポーツ界ではスタートアップテックの投資ブームが起きており、シリコンバレーにアクセスしたい選手がどんどん増えている。昨今の一流選手が高額な契約を捨ててまでウォリアーズに来る理由、実はそこにはイグダーラの陰があった、と言っても過言ではないのだ。
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