今の相場環境だからこそ提案を受けやすい商品
仕組債について
今の相場だからこそ提案を受けやすい商品。または買付検討されやすい商品が仕組債です。今回は仕組債の特徴と留意すべき点をお伝えしたいと思います。
仕組債と一口に言っても、名前の通り仕組みがついた債券ですので、様々な仕組みの商品が多種多様に存在します。(円建て、外貨建て等)一回では語りつくせないので、今後も仕組債については投稿していきたいと考えております。
今回は仕組債の中ではポピュラーな連動債についてお話していきます。
債券での運用
連動債の話をする前にまずは、債券の話をします。
債券は国や会社、銀行等が設備投資などをする際、投資家の皆さんから資金を借り入れるために発行する商品です。
投資家のメリットは資金を貸した(債券を購入した)金額に対し利息を受け取ることができることと、購入した時よりも債券価格が上昇すると(100円で買ったものが101円になると)その上昇分が利益になることです。
基本的に、債券の主要な収益源は利息の受け取りといえます。今は銀行の普通預金に置いていても、0.001%しかつかない時代です。ずっとお金を眠らせているよりはと、少しリスクをとって、預金を債券に変えて運用している方も多いと思います。
少しリスクをとってとお伝えしましたが、債券の種類によってリスクの大きさは全く異なってきます。その債券を購入した際にもらえる利息の割合(利率)が高いほどリスクが大きくなります。
利率は留意すべき点が増えれば増えるほど、高くなります。イメージは”ダルマ落とし”です。
一般的な債券に共通するリスクは①信用リスク②価格変動リスク③為替変動リスク(外貨建てのみ)④流動性リスクです。これらを積み木に例えると、それぞれのリスクの内容に応じて積み木の厚みが変わってきます。積み上げる個数や厚みを増やした分が、利率に反映されていきます。
今回テーマに挙げた連動債はリスクが高い分、利息が多くもらえる商品に該当します。先ほどから”リスクが高い”という単語を出してしまうと、悲観的に捉えてしまいがちですが、しっかりと商品特性を理解すれば、警戒しすぎる必要はありません。特性を理解した上で、商品を検討することができれば、自身の投資スタイルに合っているものを選択できる幅が拡がると思っています。
証券会社が販売している連動債でよく見るのは、日経平均株価が関わっているもの・日経平均株価とアメリカのS&P500指数が関わっているものがあります。
日経平均連動債
ここからは連動債の中でもシンプルな日経平均株価連動債について詳しく話していきます。こちらの理解が深まると、その他連動債にも応用できると思います。
できるだけわかりやすくするために、連動債のパンフレットに記載される項目を簡略化し番号を振りました。この番号と連動して説明していきます。
①の銀行はこの債券の発行体です。
発行体となる金融機関は、海外の金融機関になります。これは国内外問わずいえることですが、債券の発行者はどんな会社か。また、その会社の財務状況や格付けはどうかを確認しましょう。
債券の発行者の経営、財務状況の変化及びそれらに対する外部評価の変化などにより、元本や利息の支払い能力(信用度)が変化し、それらの支払が滞ることや、支払不能となるリスクがあります。債券発行している機関のことを可能な限り調べることは大切です。
②は満期日が書かれていますが、”期限前償還条項付”という文言がついています。よく、早期償還ともいわれる条件で、連動債の特徴の1つになります。満期前でもこの債券は一定の基準に達したら、元金が戻りますよ。という仕組みです。
一定の基準というのは、利息の支払い日が年に数回あり(基本2回か4回)、その利払い日の1・2週間前に期限前償還評価日があります。その日の日経平均の終値がこの債券の基準価格よりも上昇していた場合(今回は5%上昇時)適応されます。
例えば、債券発行時の基準の日経平均価格が27,000円であったとき、期限前償還評価日の日経平均株価終値が28,350円以上であればその時点で償還確定となり、直後の利払い日に元金とそれまでの利息が証券口座に入ってきます。この仕組みは、償還するまで続きます。ものによって、判定ごとに早期償還価格が少しずつ下がるものもあります。(早く償還されやすくなる。)
早く終わって、元金が戻ってくるならいいことじゃないかと思う方もいます。もちろんそれは間違いないのですが、極端に言ってしまえば、相場の上昇によっては最初の利払いの時に債券が終わってしまうこともあるので、利息は3か月分しかもらえないこともあります。今回の例でいうと年4%の利率で考えていた運用が3か月で終了した場合、自身が想定していた以上に利益は少なくなりますよね。この理由により⑤の期間が約○年と表記されるのです。早めに終わってしまって想定していた利息を享受できないこともリスクと捉えられます。
次に③のデジタルクーポン型についてです。これは、条件によって金利が高いものと低いもの、どちらかが適応される仕組みです。⑥の利率をもとに説明していきます。
先ほどの早期償還の時と同じく基準の日経平均価格が27,000円と仮定して当てはめていきます。
まず、表記通り、最初の3か月は価格については、日経平均価格がどうであれ固定利率年4%が購入金額に対して利払い日に支払われます。
(購入金額×年4%÷12×3ヶ月−税金)
3か月を過ぎた後は変動金利となります。㋐または㋑の条件が、早期償還価格までは上昇していない際に、利用されます。利率判定日も②と同じく利払い日の1・2週間前になります。さて、今回の利率判定は27,000円×85%ですので、判定日に日経平均終値が22,950円以上であれば次に支払われれる利息は年4%で計算され、㋐に該当します。すなわち、22,950円以下だと㋑に該当し、次回の利払いは年0.1%になります。この仕組みは毎回リセットされるので、一時㋑になっても、次の利率判定日で㋐に該当されれば次の利息は高い価格でもらえます。逆もしかりですが、しっかりと日経平均の価格水準を調べることで、購入タイミングを間違えてしまったと落胆することは減るかもしれませんね。
連動債で一番重要な仕組み
④の日経平均株価参照円建社債(ノックイン65)とありますが、満期時に元金が欠損して返ってくるリスクです。
この債券には、いくつもの判定条件があると説明しました。購入する投資家の方は多数いるので、バラバラにならないよう株価の参照期間は発行体が決定した日から一斉に始まります。参照期間は満期日もしくは償還日の1・2週間前までずっと続きます。その際、一度でも27,000円×65%(=17,550円)を下回ってしまうと、元金欠損リスクが発生します。この事象を”ノックイン”といいます。
まず、ノックインした後、元金が欠損せずに戻ってくる場合が2つあります。1つ目は、満期前の最終判定価格で発行体が指定した価格に戻っていること。その商品によって異なりますが、今回の例でいうと5年の間に基準価格×90%程度(24,300円程度)の価格まで回復することができれば、元金が戻ってきます。2つ目は②でお話しした早期償還価格に到達することです。どちらも17,550円から大幅な回復が必要になることは必須になります。
次にノックイン後早期償還価格にも最終判定価格にも到達できなかった場合です。最終償還参照価格を20,000円とすると、手元に返ってくる金額は”投資金額×20,000円÷27,000円”となるので3割ほどが欠損して戻ってくる形です。最終償還価格がより下落してしまった場合、元金が殆ど戻ってこない可能性もあることは念頭に置くべきです。
また、連動債のポイントは自分の意志では解約が難しいことです。
ほかの株式や投資信託等は損切であっても、早いタイミングで資金回収が望める可能性がありますが、連動債については流動性が低い商品なので、絶対に売れないわけではないですが、買い叩かれて、結局大きな損失になりやすいです。
自分の想定より早く償還されたり、売却が難しい商品性格とうまく付き合っていく必要がありますね。
最後に
これまで、連動債の仕組みをできるだけかみ砕いてお話してきました。
捉え方によっては、連動債の妙味を感じられなくなってしまった方もいるかもしれません。しかし、今回のような日経平均株価の推移や世界情勢を鑑みて、その価格からノックインした場合の価格がどれくらいかを計算することで、購入した後の不安が少しは軽減されるのではと考えます。
ご自身の想定する下落幅が許容範囲であれば購入するなど、自分ルールを決めていくと、相場が過剰に上昇している際は購入を見送ったり、過剰に下落している場合で、個別株を購入するのは憚れるときは、仕組債を活用したり無理せずに投資の幅を拡げることができるのではないでしょうか。自分の資産と今後何年かけてどれくらい増やしたいか等、書き出してみると今何から始めてみればよいかがわかりやすいかもしれません。
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