少年Tの悲劇~35年前のキャンプ
今をさかのぼること、35年前。
少年Tこと中学3年生のタダシを中心にして、同級生のケンジ、ノリアキ、ヒロユキの4人は、何をするのも一緒だった。
基本的には、行動力のあるタダシが計画を立て、それに皆が乗っかることが多かった。
ある時、4人で比叡山(ひえいざん)に行った。
夏休みのことである。
それぞれ、なけなしの小遣いをはたいて大阪から京都まで行き、比叡山行きのケーブルカーに乗り込んだ。
山頂にある比叡山延暦寺に詣で、お土産屋で色々買い物をし…
そこでタダシは、手持ちの資金をすべて使い切ってしまった。
タダシがその時何を考えていたのか、ほかの3人はまったくわからなかった。
「アホじゃね?」
と思ったが、金がないので下山のケーブルカーに乗ることができない。
仕方なく4人は、迷いながら山道を下り、無事下山することができた。
少年の無謀さたるや。
比叡山に行ってから少し経って、タダシは言った。
「川でキャンプやろうや」
まぁ夏休みだし。楽しそうだし。
ケンジ、ノリアキ、ヒロユキは賛成した。
キャンプの前日は大雨が降っていたが、当日は良い天気だった。
夏の太陽が、ギラギラと照りつけるような、そんな日だった。
4人はテントを設営し、はしゃぎにはしゃいだ。
夜は持参したカセットコンロで湯を沸かし、カップラーメンを食べた。
川で食べるカップラーメンは、格別のウマさであったという。
そして、就寝。
少年らしく、夜遅くまではしゃいでいたが、やはり眠気には勝てなかったようだ。
夜中。
「ごごごごごご」という音で、4人は目覚めた。
なんと!
増水した川の水が、テントに押し寄せてくるではないか。
4人は慌てて、テントを移動させた。
川の水が来ないところに。
もう大丈夫だ。
ようやく安心して、4人はふたたび眠りについた。
朝、タダシが目を覚ました時。
太陽は高い位置にあった。
ケンジ、ノリアキ、ヒロユキは先に起きていたらしい。
3人は、目覚めたタダシの顔をのぞきこんでいた。
「え…何…?どしたん…?」
寝ぼけまなこで、タダシが体を起こしたその瞬間。
バリバリバリバリ
奇妙な破裂音が、タダシの股間から聞こえた。
「え、ちょ、何!!???」
ケンジ、ノリアキ、ヒロユキはこらえきれず、笑い始めた。
「ぎゃはははは」
「くっ…あかん…おもろすぎる…」
「た、タダシ…お前、ええやつや…あはははっ」
タダシ以外の3人は、腹を抱えて爆笑している。
「お前ら何やったねん…」
タダシはトランクスを下げ、自分の股間を見た。
そこには。
木っ端みじんになった、ポテトチップスの残骸があった。
ケンジ、ノリアキ、ヒロユキは、タダシが寝ている間に、パンツの中にポテトチップスを詰め込んでいたのだった。
「だって、なぁ。あんまり可愛い顔で寝てるもんやから」
言い訳のように、ジローが言った。
「そうそう」
ノリアキ、ヒロユキもうなずく。
タダシは仕方なく、テントの外に出てポテトチップスの残骸を払った。
「お前ら覚えとけよ」
呪詛の言葉を吐きながら。
第二回ほっこり大賞に応募させていただきます。
ちなみに実話です。
お察しの方もいるかと思いますが…
少年タダシは、夫です(笑)