官能小説 秘花は妖しくからみ合う 5 約束
これまでの話は、こちらのマガジンにまとめてあります。
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里奈が祐一に初めて抱かれてから、1週間が過ぎた日の夜。
里奈は自分の部屋で、風呂上がりのアイスコーヒーを飲みながら祐一のことを想っていた。
思えば入社した時から、祐一のことが気になっていた。
祐一は営業1課の課長だから、重役に渡す書類などを時々秘書室に持ってくる。
31歳という若さで課長、目立つタイプの「イケメン」ではないが、端正で優しそうな顔立ち。
異例の出世だったはずなのに、ギラギラした部分が感じられないところも、好感が持てた。
ただ、祐一が結婚していることは社内で知らぬ者はなかった。
「あの若さで課長、そして奥さんいるんでしょ。しかも奥さん、かなりの美人らしいじゃない?」
「不倫してみたいけど、あの奥さんじゃ敵わないって噂よ。国立卒で、元はキャリアウーマンだったんでしょ?んー、無理だなぁ」
秘書課では、そんな噂が流れていた。
でも、私は長尾課長に抱かれたもんね…
里奈は、心の中でつぶやく。
ずっと祐一の事が好きだった。
秘書課に祐一が現れるたびに、胸がドキドキした。
だから、前回の出張に同行できたのは心の底から嬉しかったのだ。
抱いてと迫ってみたものの、まさか本当に抱かれるとは思っていなかった。
拒否されると覚悟していたのだ。
あれから、祐一からの連絡はない。
会社で顔を合わせても、お互い努めて知らんぷりをしていた。
会社にバレると、まずい。
でも…
課長に会いたい。
抱かれたい。
里奈は、想いをつのらせていた。
ただ、出張の時のセックスが良かったかというと、そうでもなかった。
好きな人に抱かれたというのに、里奈の体はそれほど愉悦を感じなかったのである。
それでも、祐一と体のつながりができた、という事実が里奈を満足させていた。
カッコいいよねぇ…
スマホを持ち、ホテルの部屋でこっそり撮った祐一の画像を見つめる。
とその時。
スマホの画面に、LINEの通知が届いた。
祐一からだった。
「次の金曜の夜、横浜にでも行かない?会社が終わったらそのまま行って、土曜日は横浜で過ごそうか」
えっ!?
泊まりで!?
里奈の胸は、喜びにあふれた。
「行きます!もちろん!楽しみにしてます」
と返信し、ベッドに飛び込む。
ああ!課長に会えるんだ!
次の金曜…あと2日…
嬉しさがあふれ、はやる指でスマホのカレンダーに予定を書き込んだ。
どんな服で行こうかな。
出張の時はスーツだったから、私服は思いっきりフェミニンなものにしようかな。
嬉しさに身もだえしながら、里奈は眠りについた。
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挿絵は伊集院秀麿先生の描きおろしです。
ありがとうございます。
ひょんなことから、伊集院先生に挿絵を描いていただけることになったのですが…
毎回イメージがドンピシャすぎて、驚いております。
伊集院先生は、多岐にわたるジャンルのnoteを書いておられます。
ここに、尊敬の念をこめて、伊集院先生の記事をご紹介させていただきます。