接客論_08
前回と前々回で接客の4つの要素「心技体知」についてお伝えしました。このように接客を要素ごとに分け、更にその要素ごとの内容へと深ぼっていくと、自分の得意なことや苦手なことが具体的に見えてくると思います。得意なことは伸ばしていき、苦手なことはどのようにすれば克服できるかを考えて実践していけば必ず接客力は向上します。
この4つの要素の中で「心」と「体」に関しては会社や上司から言われることが多く、研修等でもよく扱われる内容なのではないでしょうか。残り2つの「技」、「知」に関しては研修等で習う機会は少ないと思います。個人的な考えですが、接客力や販売力に直結しやすいのは「技」と「知」のほうだと思います。
「サービス」や「おもてなし」だけでは物を売ることはできません。やはり「物を売る力」には接客や販売の「技術・知識」が必要です。販売員はこの2つにもっと注力すべきです。「技術」の中にある「心理学」や「コミュニケーション能力」は接客に非常に役に立ちます。私が部下によく伝えていた例は、「人間は3つまでの選択肢でないと1つを選ぶことが難しくなる」という心理(ゴルディロックス効果)です。例えばお客さんが白シャツを探しに来店されたとします。お店の中には5〜6種類の白シャツがあった場合、上記のことを知らないと全ての種類の白シャツを見てもらうことがお客さんにとって一番良いサービスだと勘違いしてしまいます。人は4つ以上のものから1つを選ぼうとすると、選択することが難しくなります。よって、お客さんの目の前には4つ以上の商品を見させてはなりません。
では、どのようにすれば良いかというと、お客さんの前には必ず3商品しか置きません。もし4つ目を持ってくるのであれば、お客さんが一番選ばなさそうなものを外すことによって、3つを維持するのです。この「お客さんが一番選ばなそうなもの」を見極めるのが「お客さんの視線を読む」ことです。お客さんは言葉では発さなくても、視線は正直に物事を語っています。よく「目は口ほど物を言う」と言いますが、本当に視線は正直です。販売員はセールストークを語る以上に、お客さんの視線に注意することが必要です。このような心理・コミュニケーションの知識を知らないと「一生懸命頑張って接客しているのに結果が出ない、、、」と嘆くことになります。
また、最初のアパレル会社でよく言われていたことが「縦の接客」の重要性です。白シャツを探しに来店されたお客さんに白シャツのみをずっと見てもらっている(=横の接客)と白シャツしか買っていただけない可能性が高くなります。複数商品を購入していただいて客単価を上げるためには、どこかのタイミングでコーディネイトで見ていただけるようにしなければなりません(=縦の接客)。白シャツであれば、ボトムスや羽織り物や小物などを合わせてお客さんに見ていただくようにします。「デニムと合わせるとこの白シャツはいいですよ。」という感じで「縦の接客」にします。この際に、デニムを露骨に勧めるようなことはしません。あくまでも白シャツを引き立てるために合わせるのです。ただ、前にお伝えしたように見てもらうことで購入確率は必ず上がり、何人かに一人は「このデニムもいいね」と言ってくれるわけです。もしかしたら今回は購入されなくても、翌日以降デニムをまた見に来てくれるかもしれません。このような形で「縦の接客」から購入確率を上げていき、誰にでも同じ接客をすることが重要になってきます。
次回は接客の知識についてお伝えします。
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