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アパレルと小売の未来_04

ECとリアル店舗の融合」は今後も進化していくと思いますが、現時点で融合が進んでいる会社もあれば、全く進んでいないところもあると思います。今回は、ECとリアル店舗が融合していくとどのようなことが起きるのかについて考えていきたいと思います。

アパレル会社のEC推進は今後も強化されていくでしょう。EC展開者側からのECの利点はたくさんありますが、基本的なことは下記の2点になります。
①ネット環境のある日本全国の人がお客さんになりえること
②24時間、販売できる環境であること

①について
リアル店舗の場合はお客さんが来店されて、手にとって見てもらうまでその商品は認識されません。お客さんがその商品を認識するまでにはたくさんの過程や障壁が存在します。「店舗がある場所に行く」→「店舗に入る」→「その商品に気づく」→「その商品に興味を持つ」→「その商品を手に取る」ことで初めてその商品を認識します。また、「店舗が物理的に行ける距離なのか」、「店舗には入りやすいのか」、「その商品が店頭に出ているのか」など様々な障害も考えられます。ECではこのような過程や障害が縮小されますので、それは大きな利点の1つです。

②について
店舗は営業時間が決まっています。営業時間外はお客さんが「見たい!」「買いたい!」と思っても、それができません。お客さんが見たい時、買いたい時にその行動ができるECはそのメリットが大きいです。またECでは夜中でも社員の誰かがPCの前に張り付いている必要などもありませんので、人件費的なメリットも大きいです。

他にも利点があるECは、コロナの影響もあり、強化が進むのは当たり前です。そしてEC強化が進むとリアル店舗との融合が必要となり、顧客管理やポイント管理の統合が始まります。
顧客の管理方法はいくつか方法がありますが、融合していくためにはECとリアル店舗でお客さん1人に共通の1IDを付番することが必須です。この「1人1ID」で顧客管理を行なっているアパレル会社も増えてきましたが、ECが推進されていない、または統合が進んでいないアパレル会社が採用している管理方法が「1人複数ID」です。これは、顧客Aさんが新宿店と銀座店で顧客登録した場合に、それぞれの店舗でIDが付番され、店舗ごとにAさんを管理する方法です(顧客マスタにはAさんが二人いる状態)。この「1人複数ID」と「紙ベースでの顧客管理」はまだ多くのアパレル会社で採用されているのではないでしょうか。

この「1人複数ID」を「1人1ID」に変更するのは、思っている以上に大変です。システム的に「1人1ID」にするためには、①旧仕様のIDを全て捨てて0ベースで新しいIDを登録し直す方法、②旧仕様のIDで同じ人を紐付けて1つにする方法(「名寄せ」と言います)、のどちらかを選択しなければなりません。詳細は長くなるので省きますが、どちらもメリット・デメリットがあり選択するのが難しいです。

また実際の運用面でも会社や店舗の「顧客」の考え方を変更しなければなりません。「1人複数ID」で管理している場合、顧客管理の権限と責任は「店舗」にあります。これが「1人1ID」にすると基本的には「会社」に変更されます。「1人1ID」ということは、「店舗の顧客」ではなく「会社の顧客」になります。そうなると今まで店舗で管理していた方法ではうまくいかないことが出てきます。例えば「担当者」や「(その店舗内での)購入ランク」などが当てはまります。「1人1ID」では基本的には「担当者」や「店舗購入ランク」は設定できませんし、あまり意味を持ちません。ただし、店舗で接客している販売員にとってはその店舗で決めていた「項目」が重要なのです。

このような「システム的な変更」と「運用の変更」は、会社全体で新しい顧客管理方法の道筋をつけて、店舗にいる販売員全員に新しい考え方を浸透させて行わないと、「システムは変わったが、運用は前のまま」というよくありがちな失敗になります。今後のアパレルや小売の未来を考えると、OMOを目指し、ほとんどのアパレル会社が「1人1ID」へ進まなければならないと思います。しかしシステム変更だけに注力してしまって、利用・運用する店舗側への対応を疎かにするとシステム改修費だけが重くのしかかることになりますので、会社が店舗側にきちんと説明したり、浸透させることが必要です。また、店舗側も今の主流や今後の方向性や変更を予想し、その予想に対応できるよう準備する必要があると思います。そのために、販売員が自ら様々な知識を得る努力も必要になるでしょう。



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