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アパレルと小売の未来_05

前回、ECとリアル店舗の融合における「顧客管理」について述べましたが、今回は「在庫管理」です。在庫に関しても、ECが推進されると考え方が変わります。

ECを行なっていない場合、在庫は「倉庫(物流)」と「店舗」にあります。ECが加わると、システム的には1つのお店として「EC」を作成することが可能です。このような場合、在庫は「倉庫・店舗・EC」の3ヶ所になります。システム的にはそれぞれの倉庫(店舗)コードが分かれているため、3ヶ所の商品の受け渡しは伝票を切る必要があります。また、ECにはECの倉庫(店舗)コードがあり、そのコードの在庫分がECの在庫数になります。ECの在庫数が購入されていって無くなれば、「店舗にたくさん在庫があったとしても」、ECの在庫数は0のため「在庫なし」と表記されてしまいます。

これは、購買ロスに繋がります。ECはいつでも誰でも閲覧・購入できるものなので、店舗に在庫が多数あるのなら、その店舗分の在庫がECにも反映させることができれば購入ロスを防ぐことが可能です。理想は、「ECの在庫なし  = 倉庫にも店舗にも在庫なし」の状態です。これを実現するための方法はいくつかあります。完全実現ではありませんが、店舗の閉店後(21時など)から開店(10時など)までの間、倉庫(物流)と店舗の在庫をECに渡す方法を取るところもあります。また完全実現には、常時倉庫と店舗の在庫がECに加わっている状態を作り出すことで可能になります。

両方ともに、店舗にしか在庫がない商品がECで購入された場合は、店舗がECに商品を出すことになります。そのような形になると「自分の店舗の在庫=ECの在庫」になりますので、販売員は「自分の店舗の売上のために必要な在庫だから他には出せない」という考え方は通用しなくなります。販売員にとっては「自店の売上獲得」が重要なため、特に売れ筋商品を自店に確保しておきたいと思うのは当たり前です。このようなジレンマを解決するために、店舗がECに商品を出す場合、その商品を出した店舗に売上が計上できるアパレル会社もあるようです。

また、会社によって在庫管理や商品発注のやり方や考え方が違います。「本部が一括発注して、本部の営業の考えでそれぞれの店舗に商品を振り分ける方法」と「店舗に商品発注権を与え、店長や店舗スタッフで入荷する商品や商品量を決定できる方法」があります。私の場合、最初の会社が前者の方法で2つ目の会社が後者の方法でした。前者の場合、店舗は販売することがメインになり、販売員は店舗の品揃えの権限をあまり持っていません。逆に、後者は店舗で品揃えや商品数を決定することができるので、仕事に対する「面白み・責任」が高くなります。仕事の環境としては、後者のほうがやりがいがあると思います。また、在庫に関する考え方が後者は「自分が発注した商品」で売上獲得を目指していきますから、他店やECに出すことに抵抗を感じるようになります。

店舗に在庫管理や商品発注の権限を渡しているアパレル会社が、EC・店舗・倉庫の在庫を統合する(在庫の一元化)には、店舗側に在庫管理の考え方の変更を行わなければならないため、顧客管理の統合と同じく、大変になるでしょう。ただし、これも会社の在庫の消化率を上げるためには今後必須な変革です。そして顧客管理の変更同様、会社は店側に変更する必要性の説明と浸透が重要です。店側もこのような変革がいずれ来ることを理解しておく必要があります。

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