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ネルヴァルとデプレシャン

フランスの詩人、ジェラール・ド・ネルヴァルの言葉に「夢は二つ目の現実だ 」"Le Rêve est une seconde vie"というものがある。彼の主著、『火の娘たち』を読んだのは随分と昔のこと、学生時代だったと思う。願わくば永遠に夢の中にとどまっていたい、という幻想。ネルヴァルは1855年、下水道の鉄格子に首を吊って自殺した。

ギュスターヴ・ドレ 「ジェラール・ド・ネルヴァルの自殺」

夢を生きることができるのならば、再びフランスに行きたい。パリの夜道を歩きたい。シュルレアルは都会の闇のなかに現れる。

ネルヴァルに対する強い思い入れはない。「シルヴィ」というとても美しい物語を書いた、ということを聞き、翻訳で読んでみたものの、特に強い感興も覚えなかった。あとは、ゲーテの『ファウスト』をフランスに紹介した、ということくらいか。ただ、先述の"Le Rêve est une seconde vie"、「夢も一つの現実だ」という意訳で記憶していたが、この言葉だけはずっととどまっていた。そういう言葉というものはある。アルチュール・ランボーの「私は一人の他者である」"Je est un autre"とか、あるいはアルノー・デプレシャンの『そして僕は恋をする』に出てくる台詞。「あなたの不在が、私の魂に、もたれて眠る。」

アルノー・デプレシャン監督『そして僕は恋をする』より

『そして僕は恋をする』の主演俳優、マチュー・アマルリックをかつて、日仏学院のイベントで見たことがある。彼、いま調べたらロマン・ポランスキーの『毛皮のヴィーナス』という、ザッヘル・マゾッホ(SMのサド・マゾのマゾヒズムの語源となった作家)の『毛皮を着たヴィーナス』を下敷きにした映画にも出ているらしく、そちらもとても気になる。

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