A→B
研究者として日本からアメリカに渡米してきて2年たつ。正直、サクッとNatureでも出して日本に帰国できればなんて考えていたけれども世の中そう甘くない。
アメリカに来てまず始めにボスから「何がやりたい?」という形で究極のオープンクエスチョンから研究がスタートした。何をしようかということを思い描いては消し新たに練り直してということの連続で最初の3ヶ月が過ぎた。最終的に兼ねてから疑問に思っていた、なぜ「A→B」が成り立たないのだろうという疑問を研究テーマにした。
A→Bはまず自然界で起こりえない事象なんだけど、A→Bを人工的に引き起こすためにいろんな遺伝子をノックアウトした細胞群を作り、何十万の細胞の中でA→Bが起こっている細胞だけをうまく取り出して来て詳しく調べるとA→Bを起こすために邪魔な遺伝子がわかるというカラクリの実験をやっている。実験の都合上、Aの代わりにA'というものを自作してA'→Bを引き起こすための遺伝子をとうとう特定することができた。正直、A'→Bが起こせただけでもこの半年間は興奮の連続であり、いろんなステップを成功していかなければ成立しなかった。現在、日々楽しく仕事ができていることが幸せで、アメリカに来て凄くよかったと思える日常を過ごしている。幸せな事だ。コロナで外出はしにくく、アメリカのエンタメが完全に崩壊しててもだ。
なお、余談だけれどもアメリカはエンターテイメントと大自然の国だと思う。スポーツやショーをはじめとしたエンターテイメントは世界でNo.1だと思うしなんせ選択肢の幅が広い。コロナ禍でシルクドソレイユが倒産とゆう衝撃的で悲しいニュースが最近あったが。自然は「わざわざ作り出すものではない。そこにあるものだ。」という日本にいては持ち得なかった概念を持つことができた。それぐらい日常に自然が溢れている。朝は鳥の声で目を覚ます。この鳴き声はあの鳥じゃない?と妻と一緒にベランダから鳥を探す。暖かくなればベランダに出て夕食をワインと一緒に取り、目の前に広がる小川や森林を見ながら暖かさを愛でるような生活。
で話を戻すと、今はそのAとA'の微々たる違いに頭を悩ませている。A'→Bはある条件下で示せたのだ。「よっしゃ、終了。」と思ったら蓋を開けて見るとA≠A'なのだからたまったもんじゃない。A'→Bは成り立ってもA→Bは成り立たなかったのだ。
じゃあA'でなく最初からAを使ったらいいじゃないかということになるんだけど、常識的にA→Bが起こらないのだという事象がなかなかそうさせてくれない。でも今日僕からボスへの提案で、結局正攻法でA→Bを示しにかかろうか、という話になった。A'→Bを示せたツールはあるし、この方法をうまくいかせた経験もある。
A→Bが起これば、過去に40年以上にわたって人類が示せなかったことを実現することになるので、まぁそんな簡単にうまくいくわけがないのだが残された時間でやって見たいと思う。金は潤沢に提供してくれているので、あとは自分のアイデアと頑張り次第。まぁ無理だったら実力がなかったという事。
そう遠くない将来、この「A→B」が何なのか、ここでもお話しできるようになったらいいんですが、そのためにはまたコツコツと成功を積み重ねていかなくては。