医師になる若者たち
医師国家試験が今週末行われたみたいですね。
自分よりひと回り以上下の世代の子達なので、正直どんな感じなのかわからない。ここ10年弱ほど常勤医ではなく、正直若い世代との絡みはあまりないので彼らが今どんなこと軸に生きていたりするのか本当にわからない。
自分の国家試験は3日あったように思うが、最終日終了後はQuestion Bank(問題集)を「おりゃっ」とゴミ箱に捨て、そのまま男8人ぐらい朝まで飲み歩き、家に帰ってシャワー浴びたら空港へ向かい、24時間後には地球の真裏にある、ブラジルのサンパウロにあるグアルーリョス国際空港に降り立った。リオのカーニバルに参加するためだった。その後も南米を一人でうろうろし、ボリビアのウユニ塩湖の中にある塩でできたホテルで出会った若者と仲良くなり、探り探り話しているうちに、彼らもこないだの医師国家試験を受けた同士であることが分かりめちゃくちゃ盛り上がった。そのうちの一人は今もFBで繋がっているが、都内の某外科の部長になり活躍しているそうだ。
さて、時代は大きく変わり、4月から医者として世にでるだけでも不安が多いだろうに、自分自身が感染症に怯えながらも医者として立ち向かっていく必要がある状況に大いに不安だろうと思う。ようやく試験を終え、さぁストレス発散と行きたいところだろうが、世間はこんな感じでこのストレスのやり場をどこに持っていけばいいんだ!!と身悶えているかもしれない。すいませんが正直僕にもいい答えはわかりません。
昔の記録を見ると、自分は年度切り替わった4月3日から研修医として病棟に立っていたみたいだ。なんなら前の研修医からの引き継ぎのため(もちろん無償で)病院に来なさいと言われ、3月から病院に行き、電子カルテの使い方などを実地で学び、やらされていたような気がする。あれ、医師免許って何月に発行されたんだっけ?あまり記憶にはないが、とにかく学生だった3月から医者になった4月で環境はめまぐるしく変わった。
最初はよくわからず、前の研修医の先生の指示や処方をDoをしていくことでなんとかこなしていたが、痛み時「ロキソニン」の指示に従ったら、上級医に「先生は医者なのに、アセスメントもせずに痛み止め出すのか」とえらい怒られたのを覚えている。ごもっともなんだけど。
最初のプレゼンも冗長で下手くそ。色々修正食らったが、まずは一文目に情景が思い浮かぶような短めの文章で簡潔にその患者を表現するよう指導された。今の若い人はTwitterなんかもしてるし、短文で簡潔にまとめるのは得意なのかもしれない。
まぁとにかく怒られることもあるし、無能さに落ち込むこともあるし、逆に若い医者だからこその心ときめくことも数多くあると思う。
医者1年目、4月当時の日記がミクシーに残ってた。
この前私の頭の中の消しゴムって映画作品を観た。若年性アルツハイマーの主人公の話でかなり泣けた。お互いの思いやりの気持ちみたいなもんに憧れた。トランプのシーンから後はやられっぱなし(∪;ω;) 映画観て以前考えたことを思い出した。医者は患者を一つの症例として見る。若年性アルツハイマーなんて実際にあったとしたら、へぇ珍しい症例だなぁなんて具合にして皆でよってたかって見る。こういう見方は一般化に落とし込むことができ、もちろん利点は多い。ただ、あまり患者サイドの立場には立っていない見方でもある。それぞれの患者が抱える問題なんかは、そう簡単に他者である医療者に理解できるものではないだろう。ひとつひとつにドラマがあり、その積み重ねのもっと大きなものとしてその人の人生がある。その中のほんの一時期に僕らが関わっているだけにすぎない。この人たちも病院を出れば家庭があり仕事があり人生を送ってきたことを結構忘れている気がする。この映画を観ると、ここまでドラマチックな人生もなかなかないだろうがでもそんなことを考えさせられた。
退院患者さんとお別れするときは嬉しいような悲しいような気持ちになる。
「無理せずにお大事になさって下さいね。」
と言うと、
「先生こそ無理しすぎたらダメですよ。これからもいいお医者さんになって下さいね。」
と逆に励まされてしまう。それではまた・・・といいながら、またじゃダメですね、なんて笑いながら答える。
医師患者関係は人間として対等な立場でありたい。
これにはいろんな意見があるとは思うが、正しい間違っているに関わらずに、そうある形が自分は好きなだけなんだろうと思った24の春でした。
僕はベース、人が好きだったみたいだ。この時期は医者よりも非医者側に近い医者だったと思う。
その後、自分にも辛い時期はあり、かなり人間不信に陥ったこともあったが、性善説を捨て、人には期待しないように切り替え、今は心穏やかに暮らせている。
自分はなんやかんやで今はアメリカにいる。現在医者はしてない。医者に戻るのかな?多分戻るんだろうな。それはいいとして、
若いみなさんには輝かしいこれからの人生があるのでしょう。医者として働きだすこれからの人生には思い通りにいかないことも沢山出てくるでしょう。理不尽で悔しい目や、時には怖い目も見ることもあるかもしれません。辛い時は抱え込みすぎずに誰かに知らせて欲しい。知り合いに言いたくなければ匿名の人にだっていいから。世間は案外捨てたもんじゃないから。