窮屈な外界で神格化したリビドー 水脈に落とされた深く暖かいイド 露悪的に着飾った言葉のシミュラークル 洗面台の鏡に映る鮮烈な自我 意味論の快楽が待つノヴェナの祈り
持てる色で塗りつぶした現象のスペクトル 室外機の上で育つスーパーのひまわり 囲いを跳び越す山羊の自由意志 わたしらしく生きるための近代リベラリズム 第二火曜の古紙に捨てたマタイ25章
目が覚めてシェルタから顔を出すと、私を誘う匂いがする。聞こえてくる音を意識して初めて夢を思い出した。研究所のディスプレイから液晶が溶けだしシチューになる夢だ。調理装置から聞こえるそれは何かを煮込む音のようだった。そこで今晩はシュクメルリに設定していたと思い出した。
慧(けい)「中止になったってよ、旧校舎の工事」 わたし「どうしてなの?」 慧「不発弾だよ。不発弾が見つかったんだ」 わたし「なんだか嬉しそうね、慧」 慧「実はね、面白い噂を聞いたんだ。聞きたい?」 わたし「勝手に話す癖に」
はるか「古田さんって誰のことも呼び捨てしなさそう」 ハルカ「しなくもないけど」 はるか「してよ。わたしも呼ぶからさ、ハルカって」
ぼやけた六等星と思い込みの恋 内省と他罰を潰したポテトサラダ ヘーゲルの首を狙う鋭利な実存主義 部屋の隅で埃をまとうジャズピアノ 制御を忘れた破壊の魔法 致死量の3倍の自己責任論
理性的に上下するデジタルなシーケンス 君が好きそうなネットのクソコラ ちょっと背伸びしたポスト構造主義 アカデミアに囚われた畜生の霊体 現象論の果てを睨む鋭い眼差し
高架下から1人の男の声がする 「俺はなあ、どうぶつタワーバトルを流行らせて、NEW GAMEの作者にブログを面白いって言われた男なんだよ。お前らなんかとはなあ、格がちげえんだよおお」 その男の左手からこぼれ落ちた板は一体何なのだろう。
「平成最後の夏」と皆は無理に特別感をだそうとするけれど、日常への停滞感から逃れたいだけの薄っぺらい表現に、本当は何も変わらない淀んだ日常に、そしてなによりひねくれた自分自身に、僕は嫌気がさしていた。茹だるような暑さからネガティヴな思考が汗とともにまとわりつく。
紫色の空に突き刺さる高層ビル群を抜けると、1970年から変わらない4つの顔を持つ太陽が見えてくる。日本政府がコントロールを失った今もなお増殖を続け、日本の国土の8割を覆う独立知能施設 万博公園はオオサカでの悲劇を象徴する存在だ。
社会人と付き合ってそうな女子高生 買ってもらったハイブラの靴 ホテルから朝帰り すきっ腹に流し込む緑色のスムージー 教室で取り戻す日常 まだ眠そうな友達と交わすいつも通りの無駄口 気になる真っ赤な髪の男の子 2人だけの空き教室 制服に染み付いたタバコの臭い