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【伝統医療でGO!#10】 #伝統医療は痛くて怖い?#カンボジアのコックチョールと小児はり

◾️ カンボジアの民間療法「コックチョール」

背中や胸に、いわゆるコインマッサージをやった内出血。殆どは家庭療法として未だに行われていますが、カンボジアだけでなく東アジアの伝統医療に見られるもので、中国伝統医療に源流をもつ皮膚の表面を擦る鍼治療の「刺さない」技法のひとつで、刮痧(かっさ)療法とも呼ばれているものです。

コックチョールの施術跡

東アジアの歴史の中で「表面をモノで擦る医術」についての起源は古く、紀元前200年ごろに編纂された『黄帝内経・霊枢』の「九鍼十二原篇第一」という章では、古代の医療に用いられた9種類の針が紹介されていいて、紹介している中で、鑱鍼(ざんしん)や鍉鍼(ていしん)円鍼(えんしん)が、現在の刮痧療法のルールと考えられています。

古代九鍼(レプリカ)

◾️ 小児鍼(しょうにはり)とは

最も身近で刮痧療法が体系的に普及したものに「小児はり」があります。鍼と言うと某国のプロパガンダによって、全てが中国発祥という風に思われがちですが、「小児鍼」の技法は、遡ると江戸時代の日本で始められています。

小児はりのバリエーション

「鍼」が不可解に思われている原因のひとつに体表面に流れる「気(エネルギー)の調整」という下りがつきまといますが、正に「さする鍼」の効用は体表面に流れる「気」の乱れを治すことであり、陽気(元気)の塊である子供の疾患や、一年を通じて温暖で陽気な熱帯アジア地域での疾患に適応してきたという歴史は、イメージとして納得するところです。

リンク:
日本小児はり学会
小児鍼の起源について(論文)

◾️ 日本での痛いやつ

見るからに施術の跡が痛々しいコックチョールですが、ここまで体を痛めつける必要があるのでしょうか?

日本で認知されている"痛い施術”として浮かぶのは「足ツボ」でしょうか。台湾発祥の激痛マッサージとして一世を風靡しました。でもあの当時、リラクゼーションマッサージの代表格として「英国式リフレクソロジー(足ツボ)」ってのも駅前あたりで看板が並んでましたよね。

◾️ 痛い刺激と優しい刺激

実は体や脳の働きとして、フィジカルな問題には「強い刺激」、メンタルな問題には「やさしい刺激」を求める傾向があります。ストレス世代の現代に至っては、家の縁側でデッカいお灸を据えるオジイちゃんオバアちゃんの姿を見ることも無くなりなりました。クイズ番組の罰ゲームで激痛マッサージとして笑いを誘っていたタイマッサージなども、今やリラクゼーションマッサージとして世界中の観光客に認知を得ています。

リフレクソロジー(足底反射療法)/足ツボ

そう考えると、この10年で急速な経済発展を獲得したカンボジアにおいても、特に肉体労働から頭脳労働の比率が増えている都市部においては、以前は街のどこにでも見られた痛々しいコックチョールの跡をつけている成人層の数は激減しているようにも思えます。

フリー情報誌[Phnom] 伝統医療でGO! (2014年10月号)

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