配慮できないアンバランス
知り合いのお父君が、突然、そうだ、日光に行こう!と思いたったのだそうです。
リタイヤして数十年、90歳に手が届くご年齢ではありますが、一人で旅に出られるくらい心身ともに健やかなのだそうです。
それは素晴らしいですね!というと、どうやらそうでもないらしい…
コロナは5類感染症となったと言っても、高齢者にとって重症化のリスクがなくなったわけではありません。
ご本人のみならず、家族が県外の人出の多い地域に出かければ、同居家族も少なからず警戒を余儀なくされます。
知り合いは一度決定した6月の仕事のスケジュールを立て直しせざるを得なくなりました。
私と同じ、高齢者施設を訪問する仕事で、入館の際に記入する問診票に、この二週間以内に本人及び同居家族が県外を訪れたか否か?という項目があるのです。
旅行を延期、もしくは取りやめるように説得できないのは、老い先短い高齢の父に好きなようにさせてやりたいという思いやりからに他なりません。
そして当の本人は、自らの突発的な決心が周囲やら関係各所に及ぼす影響について、配慮するのがすでに難しいのです。
この件に限らず、日常のあらゆる場面でそうした、悪い言い方をすれば自分本位な行動に周囲は振り回されます。
大人の行動を阻止することはできません。
他にこんな事例を知っています。
いわゆるケアマネジャーを頼らず自らの判断で高額のサービス付き高齢者住宅に入居して、資産がなくなり転院を余儀なくされている状況にも関わらず納得できない。
システムを理解しないまま利用しているのです。
けして頭の悪いわけではない、立派なご職業に就いていらした方です。
医学的なことは私に説明できるものではありませんが、高齢になると他人の気持ちを慮ったり、状況に応じた適切な配慮や判断をすることが、どうも難しくなるらしいのです。
認知症によって引き起こされるさまざまな問題や不自由とは異なり、シワができたり目が霞んできたりするのと同様の老化現象のようです。
100歳になっても病気知らずでいるためのノウハウや、認知症にならないように趣味を持って生き生きと暮らそうとか、筋力をつけて足腰を鍛えて最期まで自分の足で歩こうとか、さまざまな老化抵抗対策が喧伝されています。
それらクリアしたらそれは理想的な終末期でありましょうけれど、ならばそれと同時に判断力と他者への配慮を損なわないための良い対策を見つけ出さなければ、前者がクリアされているほどアンバランスであると強く思います。
けして他人事じゃありません…
※画像は みなもとのともなみ。さんよりお借りしています。
ありがとうございます♪