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女同士の会話
年末から編み物を習い始めた。
本やネットを見て適当に作り始めるも、仕上がらず不良在庫と化しているいくつか。
それらを形にして使い切ってしまおうと言うわけ。
私はいつでも些細な差異にこだわって、私のは違う!と言うところがあるけど、要するに終活と呼ばれてるものなんだろう。
持病もないから余命とは考えないが、自分の思うように自分の身体を扱える時間には限りがあるのだ。
編み物教室は少し年上の知人の紹介なので相乗りで通っている。たいてい知人の小学校以来の同級生二人と一緒になる。
私はこのポジションがとても居心地が良い。
私以外の三人は旧知の仲だから、多少いざこざがあっても安定している。
年上の人は面倒見が良く優しいし寛容だ。
年下の者の前で大人気ないことはしない。
雑談のおりに私が言った。
いいですねえ、幼馴染同士お付き合いが続いていて。
私は出身地が遠いし、二十歳の頃に引っ越ししたので、同級生でいまだに連絡し合っているのは一人くらいです。
半ば本心であるが、どちらかと言えば幼馴染も親戚とも遠く離れ、しがらみのない今の状態に満足している。
玄関を出て、三歩歩けば知り合いに遭遇する地元の暮らしってどうなの?と思う。
すると元教員の方が慰むように言った。
それじゃあ、ランチをしたりどこかに遊びに行くのは誰と行くの?
先生も現役時代は同僚らと出かけたはずである。
退職して数年過ぎて、すでに過去のことなのだろう。
小・中学校時代の同級生も高校で進路が別れ、大学進学や就職で地元を出ればそのまま故郷に戻らないのが大部分だから、このようなグループは思うよりも少数派なのかも知れない。
特に女性は結婚して実家を離れるから、幼馴染も住まいは市内近隣に点在しているのだ。
ちょうど良い距離感。
仕事を持っていた者は退職し、介護も孫支援もひと段落し、かつての竹馬の友と旧交を深める…
全く知らない他人同士と今更一からやり直すのは恋愛とおんなじでめんどうくさいのだし。
そうですね…
と先生の質問に答えるべく、私は誰とランチに行くのか?思い起こした。
そもそもランチを楽しむ習慣がない。
出かけた先で昼になったらどこかで食べるのがほとんどで、ランチのために出かけたと言うことが思いつかない。
それじゃあ私はお昼を外で摂らないのかと言うと、そうでもない。
最低でも月にニ、三回は夫以外の人と外で昼ごはんを食べている。
けれど、それはやっぱり仕事の都合で娯楽じゃないから、便利な場所にあって時間調整のため長居しても怒られない、ファミリーレストラン一択なのだ。
ランチではなく、サラメシである。
年に数回は子育て時代のママ友と美味しいものを食べたりする。
昼とは限らない。
月に三回も他所で昼ごはんを食べていればもう充分な気持ちになる。
なんだかんだ言っても、うちのご飯が美味しいなあと思う。
さあ、これを手短にまとめて、なんと答えよう。
と逡巡するうちに、話題が切り替わった。
女同士の会話はテンポがミソなのだ。
モタモタしているのを待ってはくれない。
そもそもが、そんな大事な話はしないのである。
掘り下げない、こだわらない、すぐに忘れてしまう。
私もそういうことがうまくできるようになった。
歳をとるのも悪くないのだ。
※ヘッダー画像は、昨日のおひとりさまランチ。
昨年市内の某ショッピングモールに出店した『サイゼリヤ』にて。
フォカッチャ、モッツァレラとトマトの前菜、田舎のミネストローネ、どれも美味しかったです。
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