苦手なレジ係とざんねんないきもの
よく行くスーパーで、並ぶのを避けるレジがある。
レジそのものではなく、特定の方が着いたレジだ。
実は二カ所のスーパーに一人ずついらっしゃる。
背に腹は変えられなくとも、その列には並ばない。
H店の方は、いつも張り切って挨拶をしている。
いらっしゃいませだけじゃなく、すべての言動が親切丁寧で、しかも声が大きい。
いらっしゃいませ
(H店のプリペイドカード、ポイントがつく)カードはお持ちですか?
お支払いは現金ですか?
カードですか?
かしこまりました。
申し訳ございません。
大変お待たせいたしました。
ありがとうございます。
またどうぞお越しくださいませ。
たいへん丁寧な言葉使いは、接客業の手本である。
地元スーパーはアルバイトやパートの方が大半で、地域性もあり、そこまで丁寧な標準語で対応されない。
方言や訛りがある方が親しみやすく、高齢者などは聞き取りやすいように思う。
でも、言葉遣いが良いのに越したことはないし、客となあなあで雑談しているようなレジ係は近頃は滅多に見かけない。
BUT!
言葉と裏腹に手つきが不躾で雑なのだ。
釣り銭をカートに放り投げる、少し手間取るとイライラしてとんがった声を出す、たまに誤操作をして説明なく訂正してすましている。
高齢の客が財布の出し入れにもたついていると、睨みつけながら貧乏ゆすりを始めるのである。
もう一店舗の方は、明らかに動作が鈍い。
標準の0.7がけくらいだ。
手際が悪く、カゴから出した品物を右手から左手に持ち替えてみたり台においてみたり、バーコードを読み取らせるのもなんだか下手くそだ。
新人ではない、私が知る限りでも十年は勤めている。
その方のレジには、目に見えて人が並んでいない。
空いてるからと並ぶと、かえって遅くなる。
でも、こんなふうにのんびりとやってくれる方がありがたい客もいると思う。
レジではお客からも急かされるから、ゆっくりなのが周知されていれば、急かされたくない人はそこを選べばwin-winだ。
これはこれで店側に貢献しているのかもしれない。
ある時、恐ろしくマイ・ペースで支払いをしている女性客がいた。
身なりもオシャレで、バッグも財布もブランド物である。
高齢になると判断力が鈍るし、一つ一つの動作が遅くなる。
さらに忘れっぽくなるので、次の動作をその都度確認しながら行わないと始末がつかない。
帰宅してから、釣り銭が合わないとか、買ったものが入ってないとか、財布をカウンターに置いてきちゃったとか、
うっかりしたのと勘違いと思い過ごしが入り混じるから、大変だ。
それら回避するため、ゆっくりされているのだろうと思い見守っていた。
私はせっかちなので、そういうふうに考えないと無駄にイライラするのだ。
それに、どちらかといえば、自分もそちら側の人なのだし。
やっと私の番がやってきて、会計を済ませ駐車場に出た。
さっきの女性客が車に荷物を積んでいる。
女性は、空のカートを元の場所に返さず、外に置き去りにして車に乗り込んだ。
※狼の画像は、夢望庵/Mubou-an さんよりお借りしています。ありがとうございます♪