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【オーディブル】喪を明ける‐太田 忠司

妻に先立たれた父・卓弥と、その息子で、妻子と別れ実家に戻ってきた優斗の八年ぶりの同居が始まる。靴職人でぶっきらぼうの父と、今は定職に就かず様々なアルバイトで暮らす息子の共同生活は、ぎこちなく、気まずい。新たな出会いと、それぞれが抱える喪失感。「わからないまま生きていく」――。大地震、疫病、変災を経て、AIや移民の問題を抱える近未来の日本を舞台に、理不尽と向き合あおうと模索する人間を描いた物語。

Amazon書誌情報より

”喪”は「喪が明ける」といいますよね。
「喪を明ける」とは聞いたことがありません。

例えば「夜が明ける」と「夜を明ける」…
私が夜を明けられるはずがありません。夜は私にかまわず明けます。

「喪」は、日にちが来れば明けるから「喪が明ける」
「喪を明ける」には、期日のような約束事でない意志のようなものが感じられます。

それで、ああたぶん、亡くなった人への思いが、思いというか、亡くなったという事実が受け入れられなかったのが、受け入れられたという、そんな話なのかな?

タイトルから思うことしばし。

「が」と「を」の使い分けについてはこちらの解説がもっとも腑に落ちました。


聴き終えてなるほど「喪を明ける」のニュアンスが伝わりました。
当初イメージした「亡くなった人の死を受け入れる」と近いものではありましたが、少し違いました。

それは自ら選んだ死であり、先立つものから見たら残された者は、その決意を受け入れられないまま、それでも喪は明けていくのでありました。

そう「喪は明ける」
もう、残された者じゃありません。

輝く未来があるわけではないけれど、捨てたもんじゃないこともあって、だれかを救ったり、救われたり、ささやかな営みを繰り返し、
悲しみもやりきれなさも抱きしめたまま、生きていくのだと思いました。



※革靴のイラストは MMさんよりお借りしています。
ありがとうございます♪
紐をきゅっと結んで踏み出していく感じが好きです。






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