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闇バイトのハードルも下がるわけだよ。

友人のご主人の叔母さんは数年前にご主人を亡くし子どもはなく一人暮らしをされていた。

社交的なタイプで友だち付き合いが多く、習い事やボランティア活動など独り身の自由を謳歌していたという。

血圧の薬の飲み忘れから主治医が異変をキャッチし、認知症の初期状態との診断が出た。

唯一の親族である年の離れた妹さんは東京在住なので、近くに住む甥である友人のご主人が様々な手続きを肩代わりしている。
といっても、病院の付き添いや妹さんとのやりとりなどを実際に執り行うのは友人なのであるが。

福祉サービスを利用すれば独居は可能だが、親族である妹さんの強い希望と本人の判断もあって有料の特定施設に入居となった。

妹さんはこちらに出向いて、姉に適切で尚且つ自分の眼鏡に適う施設をいくつか回り、じっくり検討した。

子どもがなくご本人も厚生年金を受給しているので金銭的な問題はなかったらしい。
理想的な施設を選ぶことができ満足されている。

友人も大変律儀な人なので直接血の繋がりのない夫の叔母さんに実によくしてあげられ、他人事ながら頭が下がる。
少なくとも甥ごの嫁が私じゃなくてよかったですね!

幸せなおばあさんである。

その叔母さんの空き家になった家を処分するために片付けた時のことを話してくれた。

普段使われていない空き部屋に未開封の健康食品やドリンクの箱が山と積まれていた。

これは全く珍しい話ではない。
もし、ご自身や配偶者の親や高齢の親族で独居をされている方がいらしたら、週末にでも訪ねて一度確認しておくことをおすすめする。

認知症でなくても判断力の低下や耳の聞こえの悪化、一人暮らしの寂しさから通販地獄に陥っている可能性がある。

私はこの手の話をとある施設のケアマネさんより聞いて、すぐに母と暮らしている弟に知らせた。

弟は母の郵貯通帳を自分が管理することにして、母にはカードだけ渡した。
必要なお金はカードで下ろせるが、引き落としのあるような買い物は記帳すれば一目瞭然である。

いくら弟が通帳を管理しても、キャッシュカードがなければ引き出すことはできない。
通帳を持って郵貯窓口に行っても本人の委任状がなければどうしようもない。
判断力の低下した高齢者のお金を管理するのに最適な方法に思う。

しかし何歳からが高齢者か?という問題がある。
私も六十五歳の高齢者だが息子にこんな提案をされたら顎が30cmくらい下がりそうだ。

新しく保険契約を結ぶ場合に、75歳以下の被保険者となる人は家族同伴でなくてはならないと、簡易保険の書類に書かれていた。
つまり75歳を過ぎたら管理をシェアするのが望ましいと言うことではないかと思う。
あくまでシェアで、丸投げではない。

話を戻して、
その叔母さんが買った健康食品にはひざ痛を改善すると謳った製品が三種類あったと言う。

そこで友人は、叔母さんの整形外科の受診に付き添った際に主治医の眼前に三つを並べて、これら全て飲む必要があるか問うたそうだ。

すると医師は、飲むなら一つにしてください、と言われたそう。
まあ医師とて命が惜しかろうて(笑)飲むなと言われたなんて触れ回られても困るのである。

父が存命の頃千葉県にある総合病院の看護師から突然電話があった。

ご両親でお母さんの受診に来ているが、こちらに来ていただき話をする日程を調整したいという内容だった。
父は八十前だったが認知症ではなかった。
それでも、重要な話を理解したり決断する能力を期待されていないと言うことだ。


以前健康食品の通販会社のコールセンターに勤めていた方から聞いたことがある。
高齢者が電話をしてきて、耳が遠くて一方的に話をしたり何度説明しても理解が悪かったり、またある日突然家族が電話をしてきてキャンセルを言い渡すなと、まともなやり取りがなされていない現実が少なからずあると言う。

まともなやり取りができないと知りつつ販売するのか?
それって消極的詐欺なんじゃ…

もしお金をあげる場合なら、そんな頼りない相手じゃなく話ができる人間を出せと言うだろう。

コールセンターに罪はない、会社の言われるままに何も考えず業務を遂行しているだけである。
合法で少しも悪いことじゃないのだ。

それなら、と思う。
通販もオーバー75は親族及び身元引受人立会いの上購入を原則にしたらどうか。

通販だけじゃない。

叔母さんの空き部屋にはこれまた箱入り未開封のヘアケア製品や化粧品が、おそらく存命中使い切れぬほどあった。
こちらは行きつけの美容院での買い物である。

この件なら私も目撃したことがある。
紹介された美容院で施術中少し待つ間、高齢の女性客が来店した。
今日は髪はやらないのだと言う。
それでこの間もらった商品の支払いをツケにして欲しいと頼りなく頼んでいる。
三万いくらという声が聞こえる。

失礼かもしれないが、三万円のヘアケア用品を愛用するようには見えない風情である。
素朴な田舎のオババである。

それに、私はこの店のあれこれ製品を売りつけるのに辟易して二度と来まいと思う矢先のことだったから余計に不信を感じた。

後から別の美容師に聞いたところ、あのような品物は利ザヤが良いので売りたがるところも多いと言う。

商売だからしょうがないとはいえ、何も年金暮らしの年寄りから搾取しなくても…

と思うが、自己責任、人の金をどう使おうが余計なお世話、あるところから取れば良いと堂々と宣う方も少なくないご時世ではある。

闇バイトなるもののハードルが低いわけだ。

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