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黒田杏子俳句鑑賞6 「雨滴浄土」
今日も雨でしたね。そして、二月の花、といえば梅。
雨と梅、で思い出すことがあります。初めて参加した吟行の日のことです。
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前にも書きましたが、三十数年前、東京でブラックな企業で働いていた私は、「朝日カルチャーセンター 黒田杏子俳句教室(新宿)」に通うようになっていました。
その俳句教室で初めて吟行に参加したのです。むろん黒田先生の実地指導です。
そこは「府中市民の森」でした。(今ググると「府中郷土の森」と。)
ちょうど梅が咲いていました。みごとな梅林です。黄梅(おうばい)も。ですが、あいにく雨が降っていました。なので片手に句帳、もう一方に傘、の、なんともなさけない逍遙となりました。
ですから、つめたい雨の中、梅林を歩き回ること自体が、とても正気の沙汰とは思えませんでした。
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お弁当を遣ったあと、午後から句会です。各自投句は三句だったか五句だったか。よく覚えていません。ただ各自選句は五句だったと思います。
黒田杏子選は、二重丸、丸、並選の三段階で、目安はあるのでしょうが、その採られる数は決まっていません。私は、一句採っていただきました。ここだけは、鮮やかに記憶しています(笑) それはこんな句でした。『春雨やくつくつ笑ふ黒い土』。梅林の地面が雨を吸ってふっくらで黒かったんですね。それがなんか笑っているように思えたのでした。この句は並選でしたが、私にとっては記念すべき一句となりました。
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この日の黒田先生も、いつもと同じですが、みなと平等に出句されました。当時のノートを引っ張り出し、そのお句のうち、あらためて今もいいなあ、と思った次の二句を掲げます。
梅林の雨滴浄土と申すべし
迎春花つめたき雨滴ちりばめて 黒田杏子
迎春花は、「黄梅」のことですね。(当時は何も知らんけど)
尋常ではない二月の雨中吟行。作句において、こんなふうに言葉をすくい取り、雨滴にかがやく向こうに春近づく景を表現されるとは!
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ブラックな顔をしていた私が、だんだんオプチミストとなってゆくのは、このような黒田先生の句パワーの影響だったようにも思うのです。
※写真は今日のものです。
2024.2.21