君はコロナ(#10)
私は絶対にアルコール消毒をしない。
外でアルコール消毒を求められたときは、皮膚が弱いという理由でしのいでいる。
なにがなんでもアルコールがかからないよう、常に手袋までする徹底ぶりだ。
「君に会った人はみんな体調を崩すね」
失礼な物言いをする先輩を、私はじろりとにらんだ。
あまりシフトがかぶったことはないが、バイトを始めて1年の私も、この先輩の浮いた話は数々聞いている。相手を酔わせて、前後不覚にする手口らしい。ここは侮辱されついでに懲らしめてやろう。
「縁起でもないこと言わないでください。私、今年は一回も風邪ひいてませんよ」
「ふーん、でも休んでる人みんなが言ってるよ。君と同じシフトに入ってから体調がおかしいって」
「たまたまですよ、試してみますか?」
「じゃあ、そうしようかな・・・・・・
この後、空いてるでしょ?」
プシュッ
「おい・・・・・・溶けてる!溶けてるぞ!」
しくじった。
アルコールは消毒だけじゃなかったんだった。